気付いたらもうこんな所


 ここ2週間くらい、ふと気がつくと頭の中で流れだす音楽があって、それはサニーデイ・サービスの「週末」という曲なんだけど、12月21日にTHE BEACHESが、ゲストに曽我部恵一BANDを迎えて主催した「Disco Sandinista!」というイベントがありまして、のっけからヒサシ the KIDのDJ(それも曽我部BANDの直前に、サニーデイの「Wild Wild Party」のSugiurumn Remixをかけたりとか超反則級の)→そのまま曽我部恵一BANDへ雪崩れ込み→Freak Affair:村さんのDJを挟んでTHE BEACHES・・・とさんざんフロアを酸欠に追い立てた挙句、ラストはTHE BEACHES feat.曽我部恵一Fishmansの「Baby Blue」をカバーとかいうSpecialすぎてもはや意味のわからないセッションがあったり、「Music Lovers」まで聴けちゃったし、もうなんか感無量というか、酔いと疲れと眠気でぐだぐだになってるところでオーラス、最後の最後で、ヒサシさん以外が全員捌けて、ひとりステージで「週末」を弾き語りでやったのだけれど、そのときの歌があれから2週間、ずーっと頭の中に残っていて、こびりついてて、ふとした瞬間に流れだすのでした。

 正直に言うと、それは上手な歌とはとても言えない、どちらかといえばたぶん下手だったと思う、何しろヒサシさんはもともとダミ声で、THE BEACHESのFunkyな演奏に乗せて畳み掛けるように、がしがし突き進むみたく歌う人だし、だから本人も演奏前に「こういうの普段まったくやらないんで緊張するんですけど・・・」みたく恥ずかしそうに言ってたし、なので正直、弾き語りの映える声ではやっぱりないし、おまけに彼は最初のDJのときからマイクでフロアをがんがん煽って、曽我部BANDの演奏中もそのままずっとブースでわいわい騒いで見てたり、勿論その後でBEACHESも演奏したし、で、それらの合間合間にけっこうお酒も飲んでたはずで、したらただでさえ弾き語りに向いてないダミ声は29時の時点でもうボロボロで、掠れたり潰れたりひどい有様で、高い声とか伸ばす部分とか相当ボロボロだったんだけど、その掠れて潰れてボロボロの声で精魂込めて歌い上げた「週末」が、ずっとぼくの耳の中の奥に残っている。


 ひどいだのボロボロだの何回も言って申し訳ないけれど、やっぱりそれはあまり上手な歌ではなかった。例えばあの演奏が録音されていて、今改めて聴いてもだいたい同じ感想になると思う。その音源が仮に手もとにあったとして、そう何度も何度も繰り返し聴くようなもんでもたぶんないだろう。あれはきっと一晩中踊り明かして、外ではもう始発電車が動きだしていて、フロアの中で身体は踊り疲れて重くて頭は眠たくて、一刻も早くふとんに入りたくて、そういうときにそういう状態で、歌う人のほうも同じくらいぐったり疲れきっていて、最後の力をありったけ喉で振り絞って(そしてもう1つ重要なのは、歌う人が、その曲と、それをつくった人とを心の底から尊敬していることだけれど)、そういう要素のいろいろが全部重なり合ってつながったあの瞬間に聴いたからこそ、きっと2週間たっても抜けないくらい強烈にぼくを打ったのだと思う。

 2007年12月21日29時、代官山UNITのステージでヒサシ the KIDの歌った「週末」は、そういうわけで、とても素晴らしい歌だったと思う。


 今年もそういう素晴らしい歌や演奏といっぱい出会えたらいいなあ、と思います。素晴らしいにもいろいろあって、こういう種類の素晴らしさだけが素晴らしいわけじゃ勿論ないけど、いろんな種類の素晴らしいが、いろんな場所にきっとあって、だからなるべくいっぱいいろんなところへ出かけていきたい。ただの「素晴らしい」が、自分の中の「特別」へ昇華される瞬間ていうのは、いつだってとても気持ちが良くて、どきどきする。