なんかまたつくろう 場所は残ったぜ


 フジ・ロックの話をします。


 今年のフジ・ロックは(ご存知の方も多いと思いますが)チケットが「3日通し券、36000円」のみ。という販売形式になりました。去年までは(若干割高にはなるけれども)「1日券、14500円」というのもあって、例えば去年だと「3日間全部は参加できないけど、どうしてもビョークプライマル・スクリームが見たいから2日めだけ」参加するのが可能でした。今年は、それができなくなります。そしておそらく来年以降も。


 当然のように、この変更は大きな反発を生みました。特に「仕事の都合で通しでは行けない。けどせめて1日だけでも」という社会人の方と、同じく「3日通し券を買うほど経済的に余裕がない。けど1日でも」という(主に学生の)反発が多く見受けられます。

 費用については、smashの努力でチケット代が今年(従来、3日通し券が38000円だったのに比べ)2000円値下がりしました。それでも36000円という額は、やっぱり単純に高い。これに諸経費(飲食代、移動費など)を含めれば、だいたい10万円の見積もりが妥当でしょう。どう極限まで切り詰めようと、確実に8万円は必要です。

 日程については、ぼくも今年こそ留年のおかげでテストとのバッティングを心配する必要はありませんが(マトモに就職できるもの。と仮定して・笑)明日は我が身です。他人事ではありません。来年は自分も「仕事の都合」に振り回されている可能性が高いのです。


 だから反発する人たちの気持ちは理解できなくない。まぁ中には「3日通しのみはナイよな。まぁ俺はどうせ3日とも行くから別にいーけど」みたく無責任な意見を垂れ流す人もけっこういて、それは残念でならないんですが捨て置いて、とにかく同情の余地は大いにあると思う。

 ぼくは幸運にも過去5年間(これはまぁ。過去に何度か書いてるけど)すべからくフジ・ロックから素晴らしい恩恵を受けつづけれているし、それゆえsmashや日高さんに全幅の信頼を寄せているので反論はしません。自分が実際に参加した経験から「チケットを3日のみにしたい」という主催者側の意図なり趣向も汲み取れるし、とうとう今年それが決行されるんだな。と受け取っています。


 fujirockers.orgの掲示板では今尚「3日券のみの販売に納得がいかない」という人たちが反論を唱えたり、smashや日高さんを罵倒したり、「これでもう俺はフジを見限った」と戦線離脱を宣言したりが続いています。

 一方で擁護側と言えば、さっきの「まぁ俺には関係ないし」的な無関心や、「これで参加者減ってくれるなら願ったりだね」的な排他主義。「もう決まったんだからグチグチゆーなバカ」的な突き放し。「3ヵ月後の休みが今から取れないような会社は辞めちまえ」なんていう暴論まで・・・正直あまり好ましい印象を受けません。勿論中には良心的、誠意的な書き込みも多くありますし、全部が全部悪意的なものでは決してありませんが、それにしても不毛な意見ばかりが目立ってしまう印象は否めない。


 そんな倦怠的なムードの中で見つけた1つの書き込みを以下、勝手ながら引用させていただきます(冒頭箇所を部分的に修正)。

 ここ(※org.BBS)に無念の思いをぶつけている大多数の人たちは
 「フジ・ロックは最高」「1日でもいいから行きたい」が本音だとして、
 それが出来ない不自由さが今年生まれてしまったのは事実。


 何らかの理由で「行けない」環境におかれてしまった自分の日常の不自由さを
 フジに投影して嘆いているような気がする。


 もともとフジは「敷き居の高いフェス」「排他的」とさんざん言われてきた。
 それでも支持されてきた。
 それは、やっぱり日常の不自由さを忘れさせる魅力があったからだと思う。
 そういう環境を主催者は用意してくれてきた。


 今年からは、参加者側もより一層、主体的に自分の日常の不自由さを打破する努力が
 求められるようになったのだと思う。


 ある人は、そんな努力したくない! と行くことを放棄するだろうし、
 ある人は、嫌悪感を抱いて、二度と行くものかと思うかもしれないし、
 ある人は、それも人生さと諦めるかもしれないし、
 (別にフジだけが唯一楽しい行事でもあるまいし、それぞれ当然)
 ある人は、今年は無理だけど来年は何とかしてみようと
 思うかもしれない。


 自由は残されてるよ。誰も「来るな」とは言ってない。
 もし主催者が自分勝手な理想を追い求めて、客全員にそっぽ向かれたら
 それは主催者側に敗因があったってだけの事。
 でもこれだけこだわりの強い主催者だから、今さら芯の部分をまげることはしないと思う。
 むしろ今まではフェスが根付くまで暫定的に1日券2日券も出してたような気さえしてきた。


 皆さんはどう思いますか?

 ぼくはとても素晴らしいと思う。「自由は残されてるよ。誰も『来るな』とは言ってない」・・・という響きの、その強さと優しさ! すごく胸を打たれました。

 今年のフジ・ロックに行くとすでに決めている人。まだ迷ってる途中の人。チケット問題で行くのを諦めた人。諦めきれずにいる人。なんらかの都合で今年は行かない(行けない)けれど、いつか行こうと思ってる人。フジ・ロックをまだ何も知らない人・・・みんなに読んで、何かを感じてほしいと思う。


 そのうえでまだ今年どうするか迷ってる人や、フジ・ロックへ一度も行ったことのない人に、ぼくの言えることがあるとすれば「是非行って(多少の無理を押してでも)自分自身であの空気を感じてほしい」と思います。それだけのものが得られると、少なくともぼくは信じている(そしてきっと、ぼく以外にも多くの人が)。

 この書き込みや、そしてこれを書いた人(誰か知らないけど)が、まさにフジ・ロックの内包する強さを、優しさを、自由を。そのまま象徴しているふうにぼくは思う。その自由は、もしかしたら全員が享受できるものではないのかもしれない。享受できるかどうかは自分次第。少なくとも「苗場に行くだけで、あとは黙って待ってりゃ勝手に楽しさが転がってくる」わけじゃない。ぼくらがお金を出して買うのは、その「環境」に過ぎない。けれど、その「環境」の品質は最高だ(これは明言できる)・・・あとは自分が「どう動いて」「どう楽しむか」ってことなんですよね。


 もし今この文章を読んで少しでも何かを感じてくれた人と3ヵ月後、キャンプ・サイトでビールを乾杯とかできたら、すごい、それは・・・素晴らしいことだ。かも、しれませんね。と思っています。


 夏に、苗場で会いましょう。