0-01-01から1年間の記事一覧

初心(うぶ)めの夏

「ギャアアアアアア・・・!」と断末魔を叫びきったきり、そのまま男は絶命した。床に死体がごろり、と転がる。その全身は傷だらけだった。傷はどれも広く、深い。ついさっきまで体内をぐるぐる流れていた血が、ありとあらゆる傷口から、ぶくぶく泡を立てて…

私は たぶん、今目覚めた。 ここはどこだろう。私は何をしているのかな。 私は生暖かい液体に浸っている。 眼を閉じているのか、それとも開けているのか――わからない。けれど、辺りは暗くて、とても静かだった。私は少し身体を丸める。私を浸す液体が揺れて…

第三話

楽しい時間はあっという間に過ぎる。気がつけば、楽しかった夏祭りもそろそろ終わりに近づいている。なんかもうこれ書くの飽きてきた・・・という見えざる神の声はともかく、本当にあっという間だったと思う。 浴衣姿ではしゃぐアキコちゃんは、いつもよりど…

第二話

りん、と風鈴が鳴った。 夏である。ぼくとアキコちゃんは、これから夏祭りへデートに行く約束をしている。「ねえちょっとー、誰かいる?」 アキコちゃんが言い終わるか終わらないかのくらい颯爽と3人の部下が現れた。風鈴はただの風物詩に飾っているのでもな…

初心(うぶ)めの夏 第一話

「ギャアアアアアア・・・!」と断末魔をフル・ボリュームで叫びきり、そのまま男は絶命した。男というか、もはやそれは単なる赤い塊でしかなかった。その全身は傷だらけだった。傷はどれも広く、深い。ついさっきまで体内をぐるぐる流れていた血が、ありと…

prototype

私は たぶん、今目覚めた。 ここはどこだろう。私は何をしているのかな。 私は生暖かい液体に浸っている。 眼を閉じているのか、それとも開けているのか――わからない。けれど、辺りは暗くて、とても静かだった。私は少し身体を丸める。私を浸す液体が揺れて…