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 我ながら驚くほど飯食った。昼。23年前の町田町蔵に「食うな!」とシャウトされかねないレベルで。


 アルバイトの休憩時間、吉野家へ昼食に行ったんですけど、新発売の「角煮きのこ丼」というのにサラダとけんちん汁を添えて食べました・・・が、まったく食べた気しないんですよ。むしろ「なんか食べる前より腹減ってねぇ?」って気さえするくらい。

 でカレー丼を追加オーダーして、食べて、それでも全然お腹いっぱいにならなくてね。さすがにこの辺りで「なんか俺やばくない? 腹ん中に、もしか虫とかいたりしない?」っていう疑念に駆られつつ、しかし空腹な以上仕方ないわけで、更に「いくら丼セット」を追加オーダー。

 吉野家で丼2杯。というのは、まぁ空腹の度合い次第で考えられない量でもなく、たぶん実際けっこういると思う。なのでカレー丼の追加んときは女子店員さんも「あ。はーい」って感じの普通な対応だったんですけど、さすが3回めとなると彼女も「えっ、お前マジで!?」ってリアクションで露骨に引いてた。


 昼食を400円程度で済ませようと吉野家へ行ったはずが、この時点で総額1420円。しかも、あろうことか3杯めのいくら丼セットを食い終えてなお「あと1杯くらい普通に食えそう」とか感じてる俺・・・やべぇって! 絶対いるって虫! むしろ蟲! 長めの!


 ぼくは4杯めを追加オーダーすべきか否か、逡巡した。おそらくここで「マーボー丼をお願いします」などと言おうものなら、彼女は「おいてめぇ何者だ! その硫酸レベルの胃液は何色だ!」と、ありったけの不信感と気味悪さを込めた目でぼくを見る。それは正直ご遠慮願いたい・・・つーかぶっちゃけかなり恥ずい。

 しかしここまで来た以上、もはや2000円の大台は目前である。牛丼280円時代には7杯食っても到達しえなかった高み。渋谷の街頭アンケート「人生で一度はしてみたい夢は?(男性編)」に於いて、「札束風呂」「東京大学物語の26巻」に次ぐ堂々3位にランク・インしたと噂される「吉野家で2000円」・・・その頂きが今、手を伸ばせば届く距離に!


 と迷っていた矢先、そもそも今がアルバイトの休憩時間であるのに思い当たり、時計を見ると予定時刻を軽く15分は超えている(当たり前だバカ。3杯も食っといて)

 正気を得たぼくは早々に夢を断念し「ご馳走様でした」と言う。店員女子がやってきて、やはり若干疑念じみた目と声で、レジを打ちながらぼくの伝票を読み上げる、「角煮きのこ丼カレー丼といくら丼セットとけんちん汁と生野菜サラダで1420円になります」・・・うん。どう考えても普通に食いすぎ。


 彼女の読み上げる内容に反応し、店中の客の目がぼくに向けられて気持ち悪い。特に3杯め(いくら丼セット)を食べているときぼくの隣に着席した初老のお婆ちゃんが、物凄いオーバー・リアクションで「ぎょえー!(って、ほんとに言った・笑) アンタすごい食べるのね。もしかしてあれでしょ、あの、食べ歩きの人なんじゃない?」とか訊いてくる始末(・・・んなわけねぇ。さすがにそれは言い過ぎ)


 てゆーか言い過ぎ以前にこのお婆ちゃんは「食べ歩き」と「食い倒れ」をたぶん勘違いしているわけだが、あえてそこには触れず「違います(2つの意味で)」とだけ遠回しに答え、足早に店を去ったけれどこの期に及んでぼくはまだ小腹が空いていたので帰路、コンビニでアップルパイとコーヒーを買って職場へ戻った。