幻視


 レールに乗るのは簡単か?
 誰が簡単だって言った?
   友人か?
   映画俳優か?
   喋ったときもない第三者か?
   それとも。


 オレンジ色に光る町を見たことがあるか?
 そのとき君は、どう思った?
   ネオン・サインの明るさの種類は足りていたか?
   水たまりを避けることができたか?
   サイダー水を売っている自動販売機は何台あった?


   それとも、
   君は目を瞑っていたか?
   (だとしたら何も見えなくて当然だ)


   それとも、
   目を瞑っていたのはぼくか?
   (だとしたら・・・誰がぼくを責めれる?)


 寂れた電気屋の軒先で、古いカメラが1台売られているのを見たのは誰だ?
 たとえそれが誰だったとしても、電気屋の主人はまったく同じスマイルでこう言ったろう、
   「ごきげんよう
   良い天気ですね。
   こんな陽気の日におちおち店番なんてやってられませんや。
   ところでこれは由緒ある、とても素晴らしいカメラですよ。」