No Kidding


 フロンターレ川崎というチームがJリーグの1部に昇格したらしく、我が町・鹿島田は川崎市であるので「昇格記念祝賀会」みたいのが商店街の一角で盛大に行われていた。選手の握手会とかやってたらしい。


 夕方からアルバイトだったので商店街を通って駅へ向かう途上、その近辺を通りかかったら喜びのあまり社交性がメーター極限を振り切っていると思しきサポーターのお兄ちゃんに「あ、ねぇそこのお兄さんもどう? 〇〇選手(名前覚えてない)も来てるよ。握手してもらえるよ。一生の記念になるよ」と熱烈に歓迎されたが、急いでいたのもあって(なくても断ったけど)「いや、いいです興味ないんで」と素通りした。

 したらその隣にいた2人組の、ハッピまで着て完全お祭りモードのオヤジに「うわ、非国民だ」「とんでもねぇ」などと罵声を吐かれ、死ぬほど不愉快な気分になってますますフロンターレやらJリーグやらが嫌いになった。ますます、というか今までは好きでも嫌いでもないし別にどうでもいいや。だったのが今日で決定的に嫌いになった。頼むから他所でやってほしい。


 サッカーに限った話じゃないけど、自分がもし本当に何かを好きであるなら、自分の発言や行動でその対象の品位なり評判が不必要に損なわれるのを回避してこそ、真の「ファン」と呼べるんじゃないか。川崎市在住の人間、全員が全員フロンターレ川崎を応援していて当然のごとく決めつけ、押しつけてくる人々の態度には腹が立つ以外のいかなる感情も湧かない。

 確かにぼくの断り方が、彼らにとって好ましくない無愛想な感じだったかもしれない・・・というか実際そうだったと思う、が、にしたって「非国民」だの「とんでもねぇ」だのと侮蔑の眼差しを込めて吐き捨てられる覚えはない。もしぼくが「いや俺レッズのサポーターなんで」とか言ったとしたら、まぁ意味は違うけど「非国民」呼ばわりされる理由の1つにはなった、かもしれない。


 しかしぼくは「興味がない」と言ったんであって、じゃあサッカーに興味のない人を、サッカー好きな人はどう悪意的にあしらっても良いのか。と言えばそんなはずなくて、むしろ逆で「興味のない人をも引き込むか、或いは引き込めなくてもとりあえず嫌いにさせない。迷惑かけない。傷つけない」のを優先すべきじゃないですか。と思う。彼らは、おそらく自覚していないが、その無意識の行動によりアンチ・フロンターレの人間を1人、生産した。それはフロンターレのサポーターとして、最も背教的な行為ではないのか。


 ミッシェル・ガン・エレファントというバンドに関して、かつて良く聞いたのが「ミッシェルは好きだけどミッシェルのファンが荒っぽくて嫌いだからライヴは行かない」という声で、まぁ実際ライヴにちょくちょく行ってたぼくに言わせれば「別にそんな荒っぽい人ばかりじゃないし大丈夫だよ」って思うんだけど、やはりどこかで荒っぽいミッシェル・ファンに不愉快な思いをさせられたであろう人たちの印象はそう簡単に拭い去れず、結局彼らは解散までライヴに行かなかったのかなー。と思うと、他人事ながら残念だったり同情したい気分になる。

 ミッシェルやフロンターレに罪はない。問題なのは熱狂的なファンの、その中のほんの一部の、しかもその人たちだって根っからの悪人ってわけじゃないだろうから、彼らが好きなものを応援する一連の行動の中の、ほんの些細な一言だったり一行為だったりするんだと思う。