Guided by Voices / Gonna Never Have To Die

from al. 『Half Smiles of the Decomposed』 04


 Guided by Voices が解散する。というか、した。

 80年代半ばから連綿と続くロング・キャリアの、初のベスト盤(Best of Guided By Voices: Human Amusement at Hour)を去年リリースした矢先だったし、それを知って驚いたのもまだ記憶に新しい。


 GbV のフロントマンである Robert Pollard という人の声が、ぼくは Wayne Coyne (The Flaming Lips)や Jonathan Donahue (Mercury Rev)と並んで、とにかく無性に好きだ。甘くて、大らかで、伸びのある。

 Robert は「呼吸をするかのように曲をつくる」なんて称されもするほど多作なロック親父であるから、GbV が解散したといえ今後も彼の新しい曲や歌声を、聴けなくなるわけじゃおそらくない(し、絶対なってほしくない)けれど、長く親しんだ「入れ物」が形を失ってしまうのは、やっぱり単純に寂しいです。


 GbV の、そして Robert Pollard の美学とは、つまり「浪費」の美学である。俄かに信じがたいほどのハイ・ペースで曲を量産する彼なので、例えば物凄く素敵なメロディを1つつくったとして、それを使い惜しんだり、名残り惜しげに何度も反復させたりとか一切しない。当たり前のように、彼はそれを浪費する。「勿体ない」とか「節約」みたいな消極さと、ぼくの知る限り、最も縁の遠い男(っつーかオヤジ。なんとなくそう呼びたい)

 だから GbV の膨大なディスコグラフィには、2分ちょっとや3分足らずの名曲がごろごろ並んでいる。今回取り上げた「Gonna Never Have To Die」も、そして同時にチャート・インしてる「The Closets Of Henry」も、どちらも2分半程度の短い曲です。けれどそのちょっと短めの曲が「小品」っぽく控えめに終らず、「濃縮果汁還元100%」みたくぎゅっと実の詰まった、とてつもないバイタリティのポップ・ソングであること・・・もう素直に畏れ入るというか、敬服する他ない。


 参考までに言いますと、GbV の近作はどれも p-vine が国内盤をディストリビュートしてるんで、このラスト・アルバム「Half Smiles of the Decomposed」も今年8月にリリースされたばかりですけど、もう今 tsutaya とかに置いてあります(avexp-vine の洋楽は、他と違って「レンタル1年間禁止」縛りがない)

 が。国内盤なので、ご多分に洩れずボーナス・トラックが入ってる(15曲め)・・・これはもう完全に蛇足でしかない。と個人的に思います。曲じたいが悪いってわけじゃないんだけど、だって、これは絶対いらない。20年に及ぶキャリアをこのアルバムの、この終り方(「Huffman Prairie Flying Field」)で悲観的な余韻を残さず、ほんのちょっとだけ(ここがすごい重要)センチメンタル色を滲ませつつ閉じるところに、ぼくはたまらなく愛おしさを感じる。

 なのにこんな、取って付けたような(という言い方は曲そのものに失礼ですけど)感傷ムード濃厚な曲を、そのまた後ろに配置するなんて論外っつーか。いかにも演出じみてて興醒めします(なんだか口汚いですけど、まぁあくまで私見ですし、何よりこういうふうに言いたくなるのも愛ゆえに・・・ってことで見逃してください)


 えっと、まとめとしては「愛してるぜバカ親父! ありがとう」ということです。