Jude / 愛のChupa Chups

from al. 『Zhivago』 04


 浅井健一さんも、もう確実に円熟期に入ってますね。

 浅井さん「も」と言ったのは、ちょうど先日ハイロウズについて書いたの(id:amn:20040926#p2)と共通する部分をぼくが感じているからですけど、未だに「ブランキー・ジェット・シティの」浅井健一。しか知らない人って実は結構多いんじゃないかって気がします。


 かく云うぼくもわりかしそっち寄りというか、ぼく自身ブランキーの何にいちばん魅かれていたか。と言えば「バンドとしてのアンサンブル」とか「ギリギリのところで鬩ぎ合う感覚」とか。或いは「浅井健一の世界観」などより(勿論それらも全部好きですが)やはり「中村達也」という個人の圧倒的な存在とか存在感・・・が頭1つ抜けて大きくて、だから Rosalios や Buck Jam Tonic は欠かさずチェックしてたけど、AjicoSherbets は正直そこまで本腰入れて聴いてないです。


 けどもうね、そんな怠慢カマしてる場合じゃねーんじゃねーの? っつーか。中村達也がカッコイイなんてそんなのお前100年前から誰でも言ってるよお前縄文時代から現代まで全然変んねえんだよお前それって感じですけど、だからって達也さんにばっかウツツ抜かして「今の」ユダを聴き逃してちゃそれはそれで片手落ちっつーか勿体なさすぎませんか先生、と問いたい気分なわけですよ俺は。先生貴様は誰なんだ、と。お前あのB.C.時代からおな(しつこいので以下削除)


 ロード・ムーヴィーを模してつくられた(ジャケットも「ストレイト・ストーリー」だし)前作「Highway Child」で、ぼくの中に沸々と再燃しつつあった浅井熱を、まさに裏切ることなくド真ん中から撃ち抜いてくれた今作「Zhivago」・・・やっぱりこの人は、当たり前のことしか言えませんけど、どうしようもなくカッコイイです。

 特に「Zhivago」の突き抜け方は半端ない。「うぉー! やっと・・・ずっと待ってたんだよこれを!」って、思わず喝采したくなる人もすごくいるんじゃないでしょうか。


 ブランキー・ジェット・シティっていうバンドのパブリック・イメージとしては、やっぱりどうしても「D.I.J.のピストル」「スカンク」「赤いタンバリン」などに代表される、失踪感のあってヒリヒリしてて、暴発寸前の今にも砕け散りそうな、そういう激しい部分がフォーカスされやすい気がします。

 他方に「悪いひとたち」「不良の森」みたく荘厳で包括的な一大抒情詩があり、またミドル・テンポの賛美歌めいたサニー・サイドもあり(ぼく個人は浅井さんのこういう曲がとても好きで、具体的には「青い花」と「小さな恋のメロディ」がブランキー・ジェット・シティのマイ・ベスト2です。どうやら賛否両論だったらしい「Highway Child」を、ぼくが手放しに絶賛するのは、つまりこういう嗜好に拠っているんだと思います)それら各要素がとんでもない美しさと、ギリギリの危うさの上で共存為しえていた稀有な結合がブランキー・ジェット・シティだったと思うんですけど(でもって、まさにその感覚と直結するのが「ガソリンの揺れ方」という曲ですね)やはりオーディエンスが彼らに期待する最大公約数は「激しさ」だったんじゃないかなぁ。

 それについては、たぶんぼくと同年代や、±幾らか世代の人たちって、殆どがブランキーに途中から入ってると思うんですよね。具体的には「The Six」とか「国境線上の蟻」っていう、ベスト盤が出て以降って意味です。で、そっから入ると確かに「激しい」部分ってわりと耳につきやすいと思う。だけど実際(「The Six」をカウントしないで)9枚のオリジナル・アルバムを1枚ずつ聴いてくと、どれ1つとっても激しい曲ばかりで成り立ってるわけじゃ全然なくて。むしろどっちかっつーと「あれ。意外とバラードとかメロウなの、思ったより多いな」って改めて感じるんじゃないでしょうか。


 で。ブランキー解散後の浅井さんの諸活動を振り返ると、Ajico なんかはまさにそのまんまですけど、Sherbets にしても(あくまでどちらかと言えば、ですけど)そういう「激しさ」以外の部分を煮詰めていってた感じがします。というより、求める「激しさ」が変質していったのかもしれない。そのへんはちょっとわかんないですけど。いわゆる「D.I.J.」っぽい曲がなかったわけじゃないけど、でも最大限までメーターを振り切ってとことんブッちぎる印象より、どこかセーブしながらもっと大きく広がっていこうとするイメージが、少なくともぼくはしてた。


 んで「さーて、そろそろ久々に飛ばしてこーか」っつってアクセル切りだしたのが Jude の、特に今作「Zhivago」のモード。だからこれは、ブランキー以来なんとなく浅井さん音源全般に手を伸ばしてなかった人たちにも太鼓判でお薦めできる快作ですよ。ガンガン突っ走りまくってくれる。血が滾ります。

 「なーんかちょっと最近、俺の血は赤じゃなくて赤黒いっつーか、ややドス黒く濁ってきてんじゃないだろうか」とお悩みの人は是非、手に取ってみてください。ぶくぶく赤く煮えるはずです。そんな悩みを抱えてる人がほんとにいるかどうか知りませんけど、そうじゃない人も勿論、聴いてみたら良いと思います。