ズボンズ / 酷暑の日、昼の大雨、マイルス・デイヴィス

from al. 『New San Francisco』 04


 つきぬけた。

 このアルバムを最も端的に(ゆらゆら帝国の曲名を借りつつ)説明するなら、こうだ。


 間近に迫った「レイヴ 窮」へ向け(いよいよ来週ですってよ! ←CMです)最近、暇さえあれば片ッ端からそのへんに転がってる音源を聴いてばかりいて、そうすると「あ、これ良いな。サイトで紹介したいな」っていうのがちょくちょく出てくる。で、そういうCDは「いずれ紹介枠」として(笑)パソコンの上に積んどいて、暇と根気のあるときにピック・アップするんですけど、その「いずれ」が15枚ほど積み上がり、そろそろ何枚か片づけないと・・・って思ってた矢先「New San Francisco」を聴いたらブッ飛ばされて、何も書けなくなってしまった。


 「No.1 ライヴ・バンド」と称されることの多いズボンズ。そしてその呼び方は、良い意味でも悪い意味でも、そのまま彼らを象徴して(しまって)いた。ぼく自身、今まで何度も疑問に思ったことがある・・・つまり「ライヴのあんなに格好良いズボンズの、どうしてぼくはCDをあまり好きじゃないのか?」って。ぶっちゃけた話「Bomb You Live」という2000年にリリースされたライヴ盤さえ持っていれば、あともうズボンズのカタログは正直いらないかな・・・くらい思ってた(余談だけど、なのに過去7作のうち、このアルバムだけ唯一廃盤っていうのが切ない)

 けれどやっぱり気になって試聴してみた「New San Francisco」の、最初の1分で直感した。これはヤバい。キた、って。で、2分めには確信してた。ぼくは(そしてきっと「ぼくら」は)ずっと、これを待っていた。


 最近は「ロック」「ロック」ってやたらロックが溢れてやがるが、どれもこれも「ロール」の伴わない屑ばかりだ・・・というのはドン・マツオさんも敬愛するところのローリング・ストーンズミック・ジャガーの言葉ですけど、かく云うぼくも(いつ、どこでだったか)そのインタビューを読んで以来、触発というか。自分の中の、かなり大きな判断基準の1つに「ロール」って部分が「ロック」と両軸みたくなってて。

 勿論「ロック」も「ロール」も感覚的な言い方であって客観的にはうまく定義できないけれど、それまで(まさにミックの言うように)ロック、ロックって騒いでばかりだったぼくん中に、それ以降「で、ロールは?」っていう着眼が生まれた。という意味で、個人的にかなり影響されたと思う(っつーか、まぁそのまま受け売りですけど)


 安っぽい言い方になっちゃうけど、ロックが例えばガチャガチャいってる「音」そのものとするなら、ロールはその「隙間」とか「遊び」の部分。というふうに(きわめて感覚的に)ぼくは捉えていて、それはつまり音の1つ1つが整理整頓され(すぎ)て隙間なくぎっちり並び立てられたサウンドは、どれだけ轟音をガツガツ威勢良く鳴らしてようと、やはりどこか無味乾燥として味気ない、っていうことです。文章で例えれば、饒舌だけど行間のない感覚。

 混ぜ方の足りないお好み焼き、みたいなですね。「もっとちゃんと混ぜて空気入れなきゃ!」っていう・・・なんか余計わかりづらいかもしれないけど(笑)とにかく、そういうのがあって。

 で。その表現を敷衍すれば、常に「ロック」かつ「ロール」なライヴを展開していたズボンズの、けれどCDは「ロック」しか掬えてなかった印象がある。それだけでも聴いてるぶんには十分カッコイイんだけど、何か決定的に足りてなかった「ロール」の部分・・・それを見事に抽出し、配合してみせたのが今作「New San Francisco」だと思う。


 この決定的な新作が生み落とされた経緯については、マネージャー氏の手によるプレス・リリースに詳しいので(http://www.five-d.co.jp/zoobombs/top/04album/index.html)参照してください。実際に音を聴いてから読めば、レコーディング風景の記述に強烈な説得力を覚えるんじゃないでしょうか(どうやって「ロール」を抽出・配合してみせたか。そのタネは至ってシンプルで、最も正統だった、という話)

 だから「New San Francisco」を聴いてぼくが思ったのは「ズボンズが突然、化けた」とか。そういうんじゃなく、むしろ「もともとスゴかったズボンズが、とうとうそのスゴさをド真ん中直球でぶつけてきたぜバカヤロウ!」っていう、なんでバカヤロウって最後に付けたのか良くわかんないけど、とにかくその「待ってました本領発揮!」の部分が大きい。ほんとに嬉しいです、このアルバムを聴いて。


 あと最後に、ドン・マツオさんのブログ「Don's Choice」が(まだ始まったばかりだけど)すごく面白いですよ。

 → http://www.five-d.co.jp/bin/zoobombs/mt/