で。その面影ラッキーホール、見に行ったのはもう1ヵ月以上前になりますが、ファンクとエロと愛と涙と笑いの渾然一体。ごった煮になった彼らのステージは、ほんと一見の価値アリです。

 うさんくさいピンクのスーツに身を包んだ、古田新太みたいなうさんくさすぎる中年が、夜の繁華街をテーマにした水っぽい歌詞を抜群の歌唱力で切々と歌い上げ、それを支える演奏はがつんがつんに濃厚なファンク、女性3名からなるホーン隊の音も衣装もけばけばしくエロく、その合間合間には古田新太が、ゲストの perfume 目当てに原宿へ集まってきた面影の「お」の字も知らない連中に向かって「お前らなあ・・・ mixiperfume のメンバーのコミュ、あ〜ちゃんのだけ明らかに人少なすぎだろ!」と一触即発の説教をぶちかまし、ぎりぎりのところで大爆笑をかっさらう・・・という、もうなんていうか濃ゆすぎて卒倒しそうにカオスティックな一大エンターテイメント絵巻がそこに。


 もちろん個々の楽曲も素晴らしく、古田新太の歌唱力はもとより、各メンバーの演奏技術の高さとファンクで歌謡なビートのうねり、その安定感と一体感(なんたって今年で結成13年めのベテランです)、そして何よりやはり Acky さん(古田)の綴る、切なくも哀しすぎるストーリーテリングの巧みと深さ。これについては皆さん各自 CD を買うなり借りるなりして確かめてもらうしかないのですが、一助として
 「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」
 「あんなに反対していたお義父さんにビールをつがれて」
 「俺のせいで甲子園に行けなかった」
 「今夜、巣鴨で」
 「ひとり暮らしのホステスが初めて新聞をとった」
 「給料日さん」
 ・・・といった定番曲のタイトルを羅列するだけで、おそらく何か、少しでも感じとっていただけるのではないでしょうか。


 例えば先日のライブの2曲めが「俺のせいで甲子園に行けなかった」だったのですが、これなんかもうごりごりのダンス・ナンバーで、面影の「お」も知らない人でも軽快なパーカッションに身体が自然と揺さぶられ、サビではわけもわからず「おーれのせいでー!」と拳を振り上げ大合唱してしまうくらいノリノリのパワー・チューンなわけですが、さて、その歌詞を紐解くと「甲子園行きを決めたチームの高校球児が、恋人を地元のヤンキーにレイプされ、仕返しにボコりに行ったところ騒ぎが新聞に出てしまい暴力事件で出場停止。そして全てが変わってしまった・・・」という、すさまじく重く切ない悲哀歌だったりして、もうね涙とダンス衝動の壮絶なせめぎ合いですよ。泣きながら笑いながら踊って燃えれる、ものすごい密度のエネルギーがたった5分間の1曲に凝縮されているのです。

 そんな壮絶な曲で一気にボルテージ最高潮までもっていかれた直後に、今度は MC で「おかえりー」「赤西くーん!」「さよならー」「加護ちゃーん!」と死ぬほど脱力のコール&レスポンスっていう・・・もうなんかすごすぎてバカバカしすぎて、とにかく圧倒的に楽しい。面影ラッキーホールのライブは、すごいです。てことで時間の許す方は是非。