徒然試論 ― メッセとブログにまつわるエトセトラ


 今更ぼくが強調するまでもなくメッセンジャーとブログの発明は恐ろしく革命的であって。知人との物理的距離を精神的に近める手法は伝書鳩とか飛脚に始まり郵便、電話、eメール、携帯電話。という順番が正確かどうか定かじゃないがともかく歴史を進めてきていて、メッセンジャーが現時点でその先端にあると思う。出会い方がオン・ライン先行の場合またちょっと違うかもしれないが、さっきまで寮の同期3人と2時間くらいメッセしてて思ったのは「目の前にいるのが本人か文字列か。の差だけで他は1年前と全然同じじゃん」ってこと。何もぼくら4人が成長してないとかじゃなくてっつーか実際ぼくはそうだけどそれは別として。末尾の部屋の号数以外1文字たりとも違わない住所に皆で住んでた1年前と、場所も肩書きも収入も良く遊ぶ仲間の顔ぶれも4者4様まったく変ってしまった今。けれどメッセンジャーのフレーム内には紛れもなく1年前の、例えば深夜Yくんの部屋に集ってどーでもいー話を一晩語り明かしてしまったときとかの感覚がある。

 例えば「久々に飲まねぇ?」っつって日吉の居酒屋で旧交を暖め直しつつ昔話を肴にビール。とかってとき、その感覚はほぼゼロに近い。そこでの「1年前の日常」は確実に今と異なる軸上の過去へ押しやられ、その隔絶ゆえにノスタルジィの対象となる。直接顔や目線を合わさず、文字列だけで彼を彼と認識する「今」の現出させるこの奇妙な、ノスタルジィとかデ・ジャ・ヴに似た、けれどそのどちらとも違う不思議な感覚に例えば名前をつけるなら、きっと「魔法」がいちばんしっくりくると思う。


 「はてな」の手軽さ、利便性、使いやすさ、ネットワーク内の求心力や親近感。そういういろいろが引鉄になって最近・波乗りという分母ぶんの、分子を占める「はてな」率が驚くくらい飛躍的に増えた。現時点でまだ少数といえ他のブログも含めればその占拠率はかなりの数値だ。ぼく自身「はてなダイアリー」こそ使ってないけど「アンテナ」の使い勝手はやはり驚異で、インターネット・オプションのホームも今や、長らく固定だったmsnに「プラネタアンテナ」が取って代った。

 ブログ――とりわけ「はてなダイアリー」は1つの固定化された様式を、ホーム・ページという単位の中に築きつつある(或いは、すでに築き上げた)。近い将来「日記」と「ダイアリー」は日本語圏内に於いて異なる概念を差すことになる(或いは、もうなっている。もしくは「日記」が「ダイアリー」に併合される)――つまり「毎日の行動や感情の流れを記録する」意味の日記はアナログ・レコードと化し、「その日」思いついたネタや思考を思いつくまま列挙したもの。が脳内辞書の第一義に来る。何年か前のDJブームみたく追い風と波が到来するまで、アナログ・レコードは息を潜めて(けれど死に絶えず)静かに復権を窺うことになると思う。


 もうちょっと音楽の例えを続けると、ブログはテクノとかエレクトロニカ・ミュージックに良く似ている。土台が「テクノロジィの革新」って時点で考えてみれば当たり前かもしれないけど、要は「その気にさえなれば誰でも簡単にそれっぽいのがつくれる」ってこと。これはブログの1歩手前の、ホーム・ページの段階からそもそもそうだし、ホーム・ページ作成ツールとかってお手軽アイテムなんかまさしく「マウスで音符を並べるだけで自動作曲と編曲、おまけにmp3化までしてくれる」ソフトと瓜二つ。

 一昨日書いた話とも少し重ねて言うと「最近のクラブ・シーンの閉塞」とかって、言うまでもなく「どっかの誰かがのほほんとつくったお手軽テクノや焼き直しエレクトロニカ」の蔓延。をダイレクトに被ってるわけで。勿論そういう中からケン・イシイとかレイ・ハラカミみたいのも出てくるわけで一概に全否定はできないけどっつーか具体例が微妙に古く思えても突っ込まないでねそこはそこ。アレはアレ。じゃあロックとか他のジャンルは閉塞してないのかよ? っつわれたらそれもまた別。いや。あながち別でもないか。

 とにかくまぁそんな感じで無限(と実際思えるくらいの)増殖を日に日に続ける「はてなダイアリー」。洗練されたネタや意見をハイ・ペースで量産、提示してくれるところから「どっかの誰かの、捻りも魅力も何もない観察記録そのまんま」まで多種多様。ならぬ少種少様。多いのは数だけ。

 音楽(てゆーか音楽業界)と微妙に違うのはパワー・バランスで、青田刈り的な「あまり知られてない → ゆえにそれを好む → で、悦に入る」という消費スタイルはおそらくインターネットに於いて起こらない(ここらへん飽くまで一般論と皮膚感覚だけど)コンテンツの品質とカウンターの回転数の相関はある程度高くて、それこそCDと比べてずっと信頼できると思う。それはイコール「どっかの誰かの、捻りも魅力も何もない観察記録そのまんま」は自然淘汰されるってこと。けど勿論その一方で有象無象は日に日に追加生産されるから、あともうちょい待てばネット上にはほんとに面白いサイトだけが残る。なんて青写真は単なる理想論や絵空事。てゆーかネットに「面白さ」のみを求めてちゃぁそれはそれであんまし正しくないっつーか(悪い。とは言わないけど)片手落ちで。あと実際困るしねレポートんときとか(笑)。


 でまぁ長々と書き散らして最終的に何が言いたいかってぇと別に「インターネットの今と近未来」を的確に言い当ててやる。って分析でも「つまんねぇはてなダイアリー増えすぎ。消えろ」って悪態つきたいんでも「プラネタの方向性が今やばめに行ってるから(笑)修正しよう」って見直しを迫られてるんでもなくてね。いや最後のはちょっと考えとけよ。って突っ込みもあると思うけど別にどうでも良くて(笑)。このまま行くし。

 けどまぁ「はてな」に限らず(特に「はてな」で顕著なのも事実だけど)すごい多いんだよね。こういうさ。意図されたのと天然とを問わず、ラフな言葉にちょっとした小ネタ程度を交えて、済し崩し的に量産されてる日記とかブログとか。で、「プラネタ」がそん中に埋没してないか? っつわれて胸張って「してません」てさ。ほんのちょっとだけ強気んなって、せめてそんくらい言える程度にはなりたいよな。みたく少し思いました・っていう話。