The La's / The La's (90)

thanks to かいと (id:misato-girl / id:misato-girl:20040521#p2)


 「たった1枚のアルバムを残し、伝説となっ(てしまっ)たアーティスト」といえば、まず真ッ先に思い浮かぶのが衆目一致で The Sex Pistols 「Never Mind The Bollocks」なのは想像に難くないわけですが、こと選択範囲を「90年代、UK」と絞り込めば The La's もまた筆頭に数えられるバンドでしょう。


 スティーヴ・リリィホワイトのプロデュース・ワークが気に入らず、決裂し、リー・メイヴァースが最後まで首を縦に振らなかったためレーベル側が強行リリースし(たのが90年)結果、あらゆる方面から最大級の賛辞を得たものの他ならぬメンバー自身に「このアルバムはゴミだ! 買うな!」と罵倒の限りをされ尽くした。という(まぁありがちって言えばありがちなんだけど)いわくつきのアルバム。

 一説に拠ればリー・メイヴァースは、リリースから10年の経った2000年の時点で、未だこのアルバムの音を手直ししてばかりいたとか。また別の一説には真偽の怪しい復活論(http://www.bounce.com/news/daily.php/3187/headlineclick)なんかもありますが、ぶっちゃけた話「もういいから! おとなしく伝説のままでいてください」って思ってる向きも少なくない気がなんとなくしますね(リー・メイヴァースにとっては失礼このうえない話だけれども。個人的に、どうもその執拗すぎる拘りって部分でケヴィン・シールズと通じるものをぼくは勝手に感じてるんだけど、マイ・ブラッディ・バレンタイン再望論が未だ盛んなのに対して、ラーズ再望論って殆ど見かけないしなぁ)


 まぁそれはともかく、アルバム「The La's」の話へ。

 リー・メイヴァースについて、ぼくの抱いてるのは「すごくわかりやすいおちゃめ野郎」っていう、こうして文字に起こすと無礼きわまりない(笑)印象なんですけど、例えば、代表曲であるところの「There She Goes」にしてもね。

 あからさまに The Velvet Underground 「There She Goes Again」(1st 「The Velvet UndergroundNico」収録)を彷彿とさせるこのタイトル。「There She Goes」が「There She Goes Again」へのオマージュとしてつくられたのかどうか実際は知りませんけど(ぼくはそう思ってますが。だからこそ「わかりやすい」って言うわけで、以下そう仮定して書くけど)67年に発表された曲へのオマージュを、80年代後半に「Again」を抜いたタイトルで歌う。っていう、物凄くわかりやすいおちゃめさ。


 あと、ぼくが初めて「The La's」を聴いたとき(いつ頃だっけなぁ?)すでに「There She Goes」は、稀代の名曲として揺るぎない評価を獲得していたわけですが、そのときぼくが思ったのは「あぁ・・・まぁ綺麗で良い曲だね」程度でしかなくて、何よりファースト・インパクトは10曲め「Freedom Song」だったんですよ。「ええっ、何この暗い曲!?」って。

 あくまで一般論だけど、タイトルに「Freedom」とかって入ると、なんとなく希望なり解放感なり、明るい色の先入観がやっぱり入るじゃないですか。で、その微塵も感じさせない「Freedom Song」・・・なんかこう、いかにもリー・メイヴァースが「えへへ。どうよこれ『自由の歌』なのにとことん暗いだろ。イカしてねぇ?」って、したり顔で笑ってそうじゃないですか(※ぼくの勝手な妄想です)


 「Again」を抜いて時間軸を反転させるとか、どんより暗いアレンジで「自由」を歌うとか、とにかくコントラストがむちゃくちゃハッキリしてて(てゆーか要は真逆へ攻めるだけ、っていう・笑)とにかくわかりやすい・・・まぁぶっちゃけ安直ですよね。「おちゃめ」と「安直」の、ギリギリ境界線上くらいかな。

 で。そのわかりやすくて安直なおちゃめさが鼻についてムカつく、とかじゃ全然なくて、ぼくはわりかし「あー。なんか・・・可愛いなー」みたく思ってしまいます。良い意味できっとバカなんですよ、この人は(うわぁ言いたい放題だ)

 良い意味でバカなんだけど捻くれてる。だからこそスティーヴ・リリィホワイトのプロデュース・ワークは、リー・メイヴァースの「良い部分」とかラーズの「綺麗な部分」ばかりをサラッと濾過したサウンドになってて、何よりリー・メイヴァースは(捻くれてるゆえに)それが許せなかったんじゃないかな。というのが・・・ええと以上、全部ぼくの妄想ですけれど。


 リー・メイヴァースがどう貶そうと、やっぱりぼくは「The La's」は良いアルバムだと思います。

 ただ今このアルバムを聴こうとすると、国内盤にしろ海外盤にしろボーナス・トラックが入るんだけど(国内盤だと本編終了後に8曲も入ってて、それはまぁ嬉しいと言えば嬉しいのかもしれないが)やっぱり正直蛇足というか、オリジナルの曲数で聴きたい。

 B面ラスト(CDだと12曲め)の「Looking Glass」っていう曲がぼくいちばん好きで、だから、どうしてもこの終り方で幕を引いてほしい。ラスト1分のぐわーって生き急ぐ感覚とか(まぁこれもまたベタっちゃあベタなんだけど、それも込みで)たまらなく好きです。