お前の大事な冷蔵庫の中身を全部食っちまうぞ


 君は「まるで7インチのアナログ盤のようにぺしゃりとツブれた、ミスター・ドーナツのチョコ・ファッションの平たいやつ」を食べたことがあるか?

 俺はあるよ。てゆーか、つい今しがた食べ終えたばかりさ。


 一応ドーナツの味をした、けど食感はクッキーと煎餅の中間みたいな食べ物だった。


 そこで気づいたことが1つある。

 通常のアナログ盤よりスピンドル・ホール(レコード中央部の穴)径の大きい7インチEPは、その形状がドーナツに似て見えることから「ドーナツ盤」と呼ばれる。ところが実際にミスター・ドーナツのチョコ・ファッションを、諸事情に拠りどう好意的に見積もっても不必要としか言いようのない高圧力で長時間プレスすると、ドーナツの体積上、出来上がるのはドーナツ盤でない、いわゆる普通の(スピンドル・ホールが通常サイズの)7インチ盤にきわめて近い形状なのである。

 つまり「普通の7インチより穴でかいから(ちなみに、でかいのはジューク・ボックスの仕様に揃えた都合上)何か特別な呼び方を考えようぜ。ん? なんかドーナツっぽくね? じゃあ・・・」という安直な理由で付けられたとしか思えない「ドーナツ盤」なるこの呼称は、しかし現実には「特別でない」ほうにこそ命名されるべきだった。


 「ドーナツっぽいからドーナツ盤」「でもドーナツはドーナツ盤じゃないほう」・・・この二律背反が、世の中に横溢するありとあらゆる矛盾というものの、最も原始的かつ根源的な具体である。〇か×か。


 答えは「×」です。

 おや、君たち全員正解ですね。