君と努力を


 減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずサボってみたらちゃんと減った。私の更新頻度。

 返せ。

 とか言ってももちろん佐野は返してくれないし、更新頻度はそもそも返してもらうもんじゃなくて取り戻すもんだし、そもそも、え、ていうか佐野って誰? 俺の大学のサークルの元・同期で NATSUMEN の加藤さんにそっくりの(id:amn:20050304)佐野くん? けど佐野くんはインターネットとかしない。ネット大好きな佐野くんなんて佐野くんじゃない。そういえば佐野くん元気かな。頑張って働いてるかな。時期的にも、それに佐野くんは優秀な人だしもうじき昇進したりするのかな。しばらく会ってない佐野くんの顔を思いだす。もわもわ・・・すると俺の頭ん中にもわもわ出てきた佐野くんが言う、「ごめん。返せないよ」


 ですよね。

 わざわざ俺の頭ん中まで出てきて謝んなくても全然良いことを謝ってくれるなんてやっぱり佐野くんは良い人だなあ、と俺は感心していると佐野くんが続けて「でも滅多に更新しないくせに、たまにしたかと思えば更新の少なさをネタに自虐してばかりいる君の日記は、それはもはや日記と呼べるものなのかい?」とか言いだしたので佐野くんタイム終了。俺はそんな戯言を意に介さない。なぜなら佐野くんはインターネットとかしないので、そんな危うい「月面」事情を知ってる佐野くんなんて佐野くんじゃないし、そもそも、佐野くんは良い人だから、ただでさえ薄弱な俺のアイデンティティの根幹を揺さぶるふうなビーン・ボールを投げたりしない。つまり佐野くんは偽者だった! 偽者は去れ! そして俺の思考は最初に戻る、ていうか佐野って誰? いや、そのもっと前。


 だってほら、考えてみれば、サボってみたら更新が減る。そんなのそもそも当たり前の話じゃないか。あっ、本当だ! なんてこった。実に当たり前の話じゃないか。俺は「返せ」とか言ってる場合じゃなかった。佐野くんの偽者と遊んでる場合でもなかった。布団の中でうずくまって「ジャック、聞こえますか? 従妹さんが泣くので更新ができません」

 そうぞうしい夜。

 「カア様が起きるので更新ができません」

 寝てもいけない、起きてもいけない。

 「月面は苦戦しております」

 そうぞうしい夜。

 ・・・とかやってる場合じゃ全然なかった。俺のメーゾン・ラフィットは最初から俺の心の中にあったのだ! お。なんか俺今ちょっと良いこと言った。ちょっとカッコ良くない、今の? と途端に、無性に誰かに自慢したくなって、ねぇカッコ良くなかった今? 俺。ねぇ俺良いこと言ったんだよ、ねぇちょっと聞いてよ佐・・・いやいや佐野くんタイムもう終ってるから。えー。そして俺はふと、自分が、ハンドル・ネーム am さんであるのに気づく。なんてこった(2回め)・・・なぜ俺は am さんなのか。俺は am さんじゃなくて西澤桃華さんなら良かった。俺が西澤桃華さんだったら「俺、じゃなくて私のメーゾン・ラフィットは最初から俺の心の中にあったのよ!」「さすがお嬢様。至言でございますな」「えへへへ☆」っていうふうに自慢も賞賛もはにかみ(ながら胸中、増長)も思うがまま自在だ。うわ漫画超便利。やっぱ俺西澤桃華さんのが良い。漫画の中の人になりたい。ねぇ私漫画の中の人になりたいのポールお願い。って、ポールいねぇー!


 俺は斜め後ろにポールが控えていない現実に打ちのめされる。俺はひとりだ。俺はひとりで退屈なので、音楽でも聴いて暇をつぶそうと思う。音楽でも聴きながら暇つぶしながら、俺はどうやって漫画の中の人になれるか考えよう。漫画の中はポールもいるし分身できるし死んでも死なないしパンチラとかいっぱいあるし、きっと素敵だ。そこはかとなく素敵で楽園だ。俺は楽園で何一つ不自由なく、1分1秒を常にハッピーに生きたいのだ。すると漫画の外側の、俺の尊敬する人が俺に耳打ちしてくる。ぶつぶつ小さな声で彼は「漫画の世界も本当は・・・楽じゃないぜ」

 「え、マジっすか?」

 「マジっす」


 俺は目が覚める。うわ、危ないとこだった。何を考えてたんだ俺は。なんか今ちょっと狂気に支配されかけてた。やばいやばい。俺は現実に戻る。戻ってきた現実の世界の、周囲を見渡す。隣でどっかの兄ちゃんがじゃがりこ食いながら「GANTZ」読んでる。俺の現実は、漫画喫茶で、どっかの兄ちゃんがじゃがりこ食ってるぼりぼりという音に侵食される。うわー現実、微妙・・・と正直、思うけど声には出さず踏みとどまる。偉い頑張った俺。すると再び、佐野くんの偽者がもわもわ出てきて「うわー現実、微妙っすねぇ」とかぶっちゃけるんで偽者うるさい。去れ、お前。