かーくんがちょっとどころじゃない面白さで悶絶。

 くそ長ーいプロフィール 諸星和己くそ長ーいプロフィール


 水道橋博士がタレント本批評集「本業」(ISBN:4860520521)で「タレント本界のラジー賞」という、パッと見誉めてんだか貶してんだかわかりづらいが、考えてみれば最上級の賛辞を寄せているのを見て以来、気になって機会があれば是非読みたいと思いつつ、つっても元ジャニーズの人の自伝が偶然ぼくんとこに転がってくる機会など当然そうあるわけもなく、完全に忘れきってたらふと先日、巡り合って読んで即死。

 子どもの頃、住んでいた家が大雨のあとの鉄砲水で流されたことがある。
 ふと窓の外を見たらそれまでの景色が変わっていた。
 死ぬほど驚いた。

 冒頭でいきなりこれ。瞬殺。単なる導入部なのだが、にしてもパンチ効いてる。というより、これが単なる導入部どまりってのがすごい。大抵の一般人は鉄砲水にまず縁がないだろうし、仮に家が流されたりしたら、ほぼ確実に「人生で衝撃だった出来事ベスト3」くらい入っておかしくないと思う。しかし彼は

 こういうのを「驚天動地」と言うらしいが、その後、俺を待ち受けていた人生は、それ以上の大激動人生だった。

 と、さらっと続け、鉄砲水の話は3行で終了。早くも「それ以上の大激動」に期待が募る。


 で読むと実際すげぇ。大きく「家出・上京〜光GENJI〜解散」の前半と「ソロ・デビュー〜渡米〜現在」の後半に分かれるんだが、やはり(と言うべきか)光GENJI時代を開けっぴろげに語り倒す前半の面白さが特筆。語られる内容の味わい深さもさることながら、まずその語り口の切れ味が相当すごい。文章も軽妙で小気味良く読めるし、なんら包み隠さず片っ端からぶっちゃけていく無防備っぷりの痛快さはわりと神懸かってる。


 天下のジャニーさんをして「少年ヤクザ」と呼ばせしめたほどの悪童だったらしく、必然、悪行三昧の告白大会な話も満載なんだが、変に武勇伝がって得意げに話す素振りがまるでなく、実にナチュラルというか直球というか

 はっきり言ってジャニーさんは俺のことを嫌っていたと思うし、俺自身も好かれたいとも思わなかった。だから、興味がないのだ。
 確かにずいぶんひどい言葉も使ったし、悪いこともした。
 たとえば金だ。俺は合宿所にいる間、金に困ったことは一度もなかった。必要になるとジャニーさんのお金を盗んでいたからだ。

 あまりにもさらっと素で言う。スコーンと抜けてる。この抜けの良さが、嫌みっぽさや鼻につくらへんを完全に消臭していて見事。行為じたいは美化できないが、こうも潔くやられてしまうと正直、思わず好感を持たずにいれない。
 いわゆるボウロボン的な「今だから言うが、実はアイツが大嫌いだった」とかのギスギスした吐露にアテられる不愉快さが一切ないのもポイント高い。ほぼ唯一の暴露っぽい暴露といえば

 何が「少年隊」だよジジイのくせに・・・と半分バカにしていたことも手伝って

 という、これはかーくんに限った話じゃなく全国民の共通基盤な部分なのでなんら問題ない(なお、この後に続く少年隊・植草くんとの乱闘は、あまりのくだらなさと劇的な結末が絶妙にブレンドされた屈指の名場面です。必読。引用したいけど長すぎるのと、ネタバレもあれなんでしません)


 発売が2004年5月となってるんで、タイミング的にそろそろ文庫化して良いだろう。内容的にも、これは是非すべき快著。オフィシャルのグッズ・ショップ(http://www.ka-kun.com/store/store.html)のラインナップの意味不明さと、「諸だし昆布・星若女」なるネーミング・センスはもはやフォローのしようもないが、「くそ長〜いプロフィール」の面白さは全力でフォロー・アップしていきたいと思う。