髭/ロックンロールと五人の囚人

 やられた。どうやら次は俺の番だったらしい。もう完ペキに叩きのめされた。そういうわけで最近は髭のことばかり考えています。


 実は2年前に髭を見ている。2005年4月、Live Beat の公開収録へ NATSUMEN を見に行ったとき、対バン(とは言わないか)が髭だったのですけど、率直に言って、まったく何も覚えてない。可もなく不可もなくなバンドだなー、という程度の印象すらあやふやなほどで、その後 NATSUMEN の前に休憩でトイレへ行ったとき、ちょうど廊下でアインさんとすれちがって声をかけてもらった時点で、40分ほど行われたであろう髭ライブの記憶は一瞬で霧散し消え飛んでしまった。ほんとうにアインさんは可愛い。どうしてあんなに可愛いのだろう。例えば「Pills To Kill Ma August」のイント・・・あれ、なんか話ズレてる。

 そう、髭の話。そういう出会い方だったせいで、以来まったく興味の向かなかった髭なのですが、なぜか周りにやたら熱心なファンが多くて、それも「この人とは趣味が合うなー」とぼくが一方的に共感だったり尊敬とか慕っている方々が、口々に髭を褒めたり好きだったりして、なんなんだいったい・・・と不思議に思っていたんですけど、先日、何かの弾みで「ボニー&クライド」というシングルを聴いてみたところ忽ち虜となってしまい、わかってみれば不思議でもなんでもなく、ああ、髭は素晴らしくチャーミングでセクシーでわくわくするバンドなのでした。


 シングルはタイトル・トラックの疾走感も「ドーナツに死す」のひりひりする手触りも大好きだし、「ブラッディ・マリー、気をつけろ!」のライブ・テイクだって2年前の NHK のスタジオんときより(といっても覚えてないから、たぶん)断然がっつりしてて、けどなんつっても「Anarchy In The UK」がブッ飛んでてすごい。最高にひどくて最低に笑えてとんでもなくかっこいい。まさか2007年にもなって「Anarchy In The UK」でブッ飛ばされることんなるとは。

 そんで慌てて2年ぶんのブランクを埋めようと片っ端から音源かき集めてて(←今ココ)、その矢先に聴いた「ロックンロールと五人の囚人」で完全にぼくは打ちのめされてしまったのでした。今もう1日に何回聴いてるんだか数えきれないくらい、こればかり聴いてる。衒いなしギミックなし手加減なし、とことんストレートで痛快で、でもってむちゃくちゃ色っぽい。すっげえ名曲だと思う。須藤さんのダミ声がやばいくらいくる。ツボをえぐるように、ざくりと。


 まだ他のメンバーさんの名前と顔とパートを線で結べないくらい髭について何も知らないけど、この熱病はちょっとしばらく収まりそうにない気がします。髭かっこいい! 「まったく興味の向かない」だの「可もなく」とかって無視しつづけててごめんて言いたい。といっても今は「ロックンロールと五人の囚人」ばかり断トツで何度も聴きまくってて他の曲とかあんまよくまだわかってないけど、じっくり時間をかけてずぶずぶハマっていきたいです。クセがないのにクセがあって、すごく変なバンドなのにすごくストレート。今の印象はそんな感じ、と、あと須藤さんが最高にセクシーでグラマラスだなあっていうこと。

 気づくのに2年かかったけど、気づけて良かった。良くなかったのは、ただでさえ Juliette Lewis と The Bird And The Bee とパノラマ・スティール・オーケストラと長見順さんの激カブりでどうしていいかわかんなかった Fuji Rock 2日めの朝が、これでもう完全にカオス化したこと。困り果てるしかない。今の俺には、俺があと4人必要です。