我儘な暑さはほらまた僕等を焦がし

amn2004-03-09



 に今年もやってきますよ夏休み。今年は3日通し券のみ。という販売形式ゆえ、おそらくかなりの高倍率になると思われる早割チケットの申し込み期間は3月14〜21日ですので皆さんお忘れなく。

 はてなの主目的が備忘録じゃいけねぇやなぁ。との聴こえざる警鐘を「皆さんお忘れなく」のワン・フレーズで掻き消し、誤魔化しつつ手綱をちょいと緩めてみたり。ちなみに去年のマイ・ベスト・アクトは2日め、オレンジ・コートのpainkillerですよ。


 John ZornBill Laswell吉田達也。という国士無双の盤石にも拘らず、何しろ裏が世界の歌姫ビョーク(緑)、世界の上半身裸イギー・ポップ(白)の2トップに加え、赤テントでは折しも当時・新しモノ好きのクラブ・ピープルな皆さんの間で大注目の的。と専ら噂されていたロイクソップ・・・その苛烈きわまる群雄割拠の呷りをモロに食った形で、山下洋輔トリオ終演後のオレンジ・コートは、まさしく水を打ったような静けさ(てゆーか実際、雨降ってたし)。

 おまけにぼくは雨避けに羽織っていたパーカーを、ロイクソップ観にレッド・マーキーへ移動する。という彼女(現。当時はまだ知り合って2日めの知人)に貸してしまい(早くも10分後に死ぬほど後悔しはじめる)かなり激しめな雨の降りしきる夜の高地にTシャツ1枚。もはや暴挙と呼ぶにすら値しない極寒の出で立ちで開演を待っていた。


 演奏が始まると同時に寒さは一気に吹き飛んだ・・・なんて勿論そんな嘘は言わない。漫画じゃねぇんだから。そりゃもう死ぬほど寒かったもの。骨の髄まで染み入る(大袈裟でなく、まさにそんな感じの)寒さにガクガク震えながら、それでも、しがみつくように、彼らの演奏にぼくは魅入って、聴き入った。

 というか殆どずっと吉田達也さんのドラムを追ってた。


 今になって振り返れば、あの悪天候はこれ以上ないってくらい最高の演出だったかもしれない。最悪のコンディション下で、ぼくは初めて吉田達也の演奏に触れた。雨でズブ濡れになりながらの、彼の壮絶なドラム・プレイとの邂逅。その衝撃はほんと凄くて、恐ろしいくらい感動的だった。

 バッティングと悪天候の相乗効果で、トリというのにステージ前には100人(?)程度の疎らすぎる人影。それでもその100人の熱烈な、心からの(そう。あれこそが安易な形骸化や予定調和の一切ない、真に純粋なアンコールだったと思う)拍手はぱらぱらと鳴り止まず、それに応えての再演は結局3度にも及んだ。

 最後のセッションが終るとビル・ラズウェルが空を指して、吉田達也に耳許で何か囁いていた。嬉しそうな表情で。状況から推してそれは、まず間違いなく「見ろよタツヤ。俺たちの演奏で雨が止んだぜ。イカすじゃねぇか」みたいなことだ(そう。彼らの演奏が終る頃、あれほど執拗に降りつづいていた雨がいつしか止んでいたのだった)。

 聞いたところではビョークも(彼女は実際にステージ上で、オーディエンスに向けて)同じ言葉を口にしたらしいけど、勿論そこにいなかったぼくには無縁な話だ。ぼく(や、あのときオレンジ・コートにいた人たち)にとって、たとえその言葉が客席に向けられはしなくとも、吉田達也に耳打ちするビル・ラズウェルの嬉しそうな顔が、あの日の、あの演奏の、あの場所にあった全てだった。

 なおも鳴り止まない熱い拍手に、いい加減そろそろ困り果てた顔で(笑)出てきた吉田さんが「明日。3時からここでルインズやります。見に来てください」と控えめに言って2日め、オレンジ・コートの幕を引いた。



 Fuji Rockは出会いの場だ。とぼくは思っている。

 2003年の夏の時点で、ジャズという音楽に関心はあったし、実際ジャズ・ミュージシャンに師事して音楽理論を学んでいる身であったといえ、ぼくはジャズを殆ど聴いたこともないし何も知らない白紙の状態だった。だから「今年のフジにジャズ・ステージが新設される」の報を聞いたとき即座に、今年はどうしても見たいの(Rovoとか)以外の、できる限りの時間をオレンジ・コートに居座って過ごそう。と考えた。果して、こういう出会いを享受できた。

 思い返せばロック以外の音楽を何一つ知らない、純粋培養のロック・キッズ(笑)だったぼくがダンス・ミュージックと初コンタクトしたのが、他ならぬ99年のFuji Rockで(これまた昨日と良く似た話だけれど、ぼくはアンダーワールドって名前さえ知らずに「ボーン・スリッピー」や「レズ」で夢中になって踊ったのだった。うわぁー青かりし日々)それ以来毎年、何かしらの「未知との遭遇」を苗場から与えられつづけている。

 去年のFuji Rockで知り合った恋人と未だに交際がつづいている。というベタすぎて何も笑えない駄弁はともかく、ぶっちゃけ幸運な出会いばかりがさすがにそろそろ続かないかな。って思いも内心・幾許かある。けれどそんなのは過去5年間で築き上げられたFuji Rockへの信頼と比べて、ゼロにも等しい微々たるものだ。


 誰でも言ってることだけど、出演者のライン・アップが何1つ発表されてない段階で、5ヵ月も先のチケット10000枚を瞬く間に売り切るフェスティヴァルなんて他にそうあるものじゃない。Fuji Rockを知る前と知った後とでぼく自身、夏が格段に待ち遠しくなった。

 渋さ知らズオーケストラのライヴ映像(DVD環境のようやく整ったことで、いよいよお披露目となった「ウラン」第5号。売り切れを恐れてだいぶ前に購入したまま、観れずに未開封で放置されてたやつ)を観ながら「あぁー今年も早く夏来ねぇかなー」と、期待に胸を膨らませる今日でした。


 あと「ついでにサンタナとか来ねぇかなぁ」って、さりげなく期待もしている。