Hi-5 / Music Re-start (02)

thanks to 岩倉(id:hatiras


 ここ数年、レコ屋で「J-punk」だの「日本のラウド系」と括られる音楽を生理的に受けつけれない自分がいて(そういう音楽じたいを否定する意図はないけれど)ロクに聴きもせず音を勝手に推測しては「もういいや」って遠ざけちゃって良くないなぁ。と思いつつ、どうにも気乗りせず聴かず終いで幾つものバンドを看過してしまう。

 Hi-5 もその例に洩れず、最新作「Living In Tokyo Life」を sugiurumn がプロデュース。と知り気になりつつも先延ばしにしていたのだけれど、「gra(m → id:amn:20040520)」を書いた直後、岩倉さんに聴かせてもらった「Wonder In Wonder Time」でノッケからブッ飛んだ。イントロのタイコで直感的に「わ。これやべぇ、すげー好きっぽい」と思ったら案の定・・・むちゃくちゃカッコイイですよ貴方!


 突然話は飛びますが「名盤」ってなんでしょう。勿論その解釈は人に拠りけりなのでしょうが、ぼくにとっての名盤は、いわゆる「完全無欠の超絶盤」的な意味合いより「不完全ではありながら、けれど愛しくて仕方ない」って趣がずっと強い。

 世に名盤は数あれど、例えば10トラック収録のアルバムの、10曲全てをまったく均一の度合いで愛せることって殆どなくて、どれだけ粒揃いな秀作であれ何10回。何100回と聴くうちに自ずと「ヘヴィ・ローテ曲」「飛ばしがちな曲」って分かれてくると思います。

 その「偏り」のできる限り少ない、10曲が10曲ともハイ・レベルに統一されてこそ「名盤」と解釈する人も勿論いるでしょうし、それはそれで十分納得できるんですが、ぼくはわりかしその逆で、自分にとって名盤であればあるほど顕著に「偏っ」て然るべき。というスタンスです(そのうえで、かつ「1枚のアルバムとして」名盤でもないといけない。ちょっと説明しづらいんだけど)


 誤解を招きかねない言い方ですが「10曲とも全部好き!」っていうタイプの名盤って、ぼくは実感があまり湧かない。ぼくにとっての名盤とは「むちゃくちゃ好きな7曲+それほどでもない3曲」くらいの配分で、けど「その好きな7曲はほんと好きで好きで仕方ない!」みたく捉えてもらって良いかもしれない。

 で。その比率が逆転して「3曲はむちゃくちゃ好き。けど他7曲はあんまし・・・」とかってなってしまうと、今度は「1枚のアルバムとして」解れてしまい、これはこれで名盤たりえない。乱暴に要約すると、まぁだいたいこんなイメージでしょうか。


 「Music Re-start」は後者の意味で、名盤と呼ぶには物足りなさの残るアルバム。文句なしにぶっちぎりでカッコイイ「Wonder In Wonder Time」と、次点にタイトル・トラック「Music Re-start」、9曲め「Web Ride」が続くらへんはほんと素晴らしいんだけど、それ以下の8曲が正直いまいちピンとこない。

 全体的な質感は、ちょうどギター・ポップからエレクトロ主体へと移行する過渡期の pre-school にとても近い印象を受けます(特に4曲め「シベリア」とか、10曲め「フューチャーエレクトロパレード」辺り。武田さんと大和田さんの声が単純に似てるのもあるし、サウンド的な質感や、それに伴う「煮え切らなさ」も含めて全部)


 要は、何度も繰り返しちゃうけど、良くも悪くも「Wonder In Wonder Time」1曲がアルバム全部を持ってっちゃってる印象が拭えない。逆に言えばそれほどこの1曲が素晴らしいってことなんですけど、それだけに「1枚のアルバムとして」まとめ上げきれてないのが惜しいなぁ。って、つくづく思う。


 今回は「gra(m)」でアルバム・レヴューという形を取っているので、なんとなく否定的っぽい書き方になっちゃったけど「pick up」で楽曲単位で書いてたら、確実に「Wonder In Wonder Time」をベタ誉めしてたと思います。や、ほんとカッコイイから(オフィシャル・サイトで試聴できますよ → http://www.faith-group.co.jp/Hi-5/index.shtml