音楽Ⅱ


 サニーデイ・サービスは「若者たち」「東京」「愛と笑いの夜」「サニーデイ・サービス」「24時」「Mugen」「Love Album」・・・という7枚のアルバムを残し2000年12月14日、解散した。


 この7枚を好きな順に並べると、順列 7!=5040 で、実に5000通り以上もの並べ方が存在するのだけれど、その日。そのとき。の気分しだいで、この膨大数のパターン全てが選択されうる。というのが、ぼくがサニーデイ・サービスを未だに愛聴する理由かもしれない。

 他のバンドだと大抵「愛聴盤」「わりと聴くもの」「あんま好きじゃないやつ」・・・がある程度まで区分けされてしまっていて、たとえ選択肢が5000あっても実際のところ10とか20くらいだと思う。勿論ぼくにも好みの傾向っていうのはあって、サニーデイ・サービスにしても上位にわりと来やすいのが「サニーデイ・サービス」と「Mugen」と「Love Album」で、中でも「Love Album」が特に多くて、「東京」はだいたいいつも中の上か中くらいで・・・っていう按配。

 なんだけど、でも今日は「24時」が1位で、2位が「若者たち」で「東京」は7位かな。っていう日もちゃんとあって、それってわりとすごいことかもしれないと思う。ちなみに今日の、今の気分だと

 1. Mugen
 2. 愛と笑いの夜
 3. Love Album
 4. サニーデイ・サービス
 5. 24時
 6. 東京
 7. 若者たち


 ・・・みたくなります。で、上下がひっくり返って 7→6→・・・→1 ってなる日もある。たぶん。だから要するに「全部好きです。愛してます」っていう、まぁ、それだけのことなんだけれども。あと余談だけどジャケットは「サマー・ソルジャー」のシングル盤のがいちばん好きです。アルバムだと「若者たち」を除いて(笑)6枚がほぼ横一線。


 曽我部恵一さんのソロ活動が始まって、最初に買ったカタログはレディメイドの「ギター」の7インチ。B面は殆ど聴いてないけど、A面はとんでもなく聴きまくったのでもう今だいぶ音が悪い(ちょうどその頃、傷んだ針をずっとケチって替えずにいたせいもある)ノイズがジリジリ入るけれど、でもそのジリジリが嫌いじゃなくて、余計に何度も聴いて、また盤が傷む。のを繰り返しているうちに最初のアルバム「曽我部恵一」が出た。

 そこまで正直ガツッとこなくて、レンタルしたのをMDに落として「これで良いや。しばらく聴きこんで、やっぱり欲しくなったら買おう」と思って、やっぱり欲しくなるより早く2枚め「瞬間と永遠」が出た。


 そこまで正直ガツッとこなくて、レンタルしたのをMDに落として「これで良いや。しばらく聴きこんで、やっぱり欲しくなったら買おう」と思って、やっぱり欲しくなるより早くライヴ・アルバム「Shimokitazawa Concert」が出た。

 「Shimokitazawa Concert」は今年の4月3日、下北沢のカフェ mona recordshttp://www.mona-records.com/)で行われた弾き語りライヴを、そのままパッケージした実況盤。そのまま、と言うのは単に「ライヴを」っていう意味じゃなく、それこそ「空間ごと」っていう感覚。曖昧ですけど、まぁ聴いてもらえればすぐわかります。


 そして多分これが、ぼくの2004年にいちばん多く聴いたアルバムだと思う。

 さっきから「このアルバムを一言で言えば・・・」って書こうとして、一言で言えば・・・なんだろう? ってずっと考えてるんだけど、例えば安直に「愛」とか「自由」とか「空気」とか。或いは「光」や「太陽」、「無垢」・・・どれもしっくりこない。というか全部そうであって、全部それだけじゃない。って気がする。

 まぁそういうのは別に全然どうでも良い、みたいのを先日言ったばかり(id:amn:20041119)だし、あまり考え込んでも無意味かな。とも思うんだけど、とにかくじゃあ、このアルバムを一言で言えば「そういうの全部」っていうことにします。全然一言で言えてねぇー、という矛盾を孕みつつ(笑)まぁそうしよう。


 2枚のソロ・アルバム「曽我部恵一」と「瞬間と永遠」をそこまでガツッと感じれなかったのは、嫌な言い方になっちゃうけど、どちらも中途半端に思えてしまったからだと思う。それはどこか「窮屈な」印象と、他方「窮屈じゃなさすぎて、逆にとっ散らかっちゃった」印象という、まぁ明らかに矛盾してますけど(笑)でも実際、その相反する両方をなんとなくぼくは感じてて。

 サニーデイ・サービスっていうのは溶けるように解散したバンドだった。溶けるように解散して、そのままどんどん拡散していって、その良さも悪さも凝縮されてた核の部分がちょっとずつ蒸発して、薄められて、空気に混じって見えなくなって、それでも頑張って核の部分を掬い取ろうとしたような・・・そういうイメージ(って伝わるのかこれは・笑。すいません)


 勿論それで掬い取れた良い部分もいっぱいあって、例えば 1st の「ギター」とか「真昼の出来事」とか。2nd なら「White Tipi」や「浜辺」なんか大好きで(id:amn:20040422#p3)だから駄作とは決して思わないけど、でもやっぱりアルバム全体として物足りなさも残ってて。

 蒸発して、薄められて、空気に混じって見えなくなって、それでも頑張って核の部分を掬い取ろうとしたのが上記の2枚だとすれば「じゃあもう核だけ掬い取るとかじゃなくてさ。溶けて見えなくなっちゃった部分も含めて、そのまま空気ごと丸々パッケージしちゃえば良いじゃん」っていう・・・「Shimokitazawa Concert」っていうのは、つまり、そういうアルバムだと思う。

 「いや思うも何も、ライヴ盤って時点でそりゃ普通そうでしょ」って言われるかもしれないけど、でも、うまく言えなくて歯痒いけれど、それだけじゃない絶対別の「何か」があって、なぜならその証拠に最新作「Strawberry」はスタジオ録音盤だけど、でもここには「Shimokitazawa Concert」と同じ「そのまま空気ごと丸々」が、ちゃんと詰まっているからです。


 曽我部さんが3枚めのソロ・アルバムを出すって聞いたとき、正直ぼくは「うーん・・・別に良いかな」って思った。だってもう「Shimokitazawa Concert」をぼくは持っているし、これさえあれば他のソロ・アルバムはあんまりいらない気がしてた。で、実際「Strawberry」が10月8日に発売されて以降もぼくは相変わらず「Shimokitazawa Concert」をずっと聴いてて、とりあえず実物をCDショップで手に取ってみようとすら思わなかった。

 そのまま1ヵ月以上が過ぎて先日、久々に行った渋谷のタワー・レコードの、ちょうど発売されたばかりで棚に何枚か並んでいた「Strawberry」のアナログ盤の、ジャケットの空の色がとても綺麗で、特に裏ジャケットの写真があまりに綺麗で、可愛くて、ぼく好みで、それで思わず衝動買いしてしまったのでした。


 その衝動に、ぼくは感謝する。

 具体的には曽我部さんじゃなく、裏ジャケットのセーラー服の女のコに感謝する(笑)


 まだ買って1週間しか経ってないけど、もう今「Strawberry」は「Shimokitazawa Concert」と同じくらい好きなアルバムです。さっきからこの文章を書きながら、20分おきに盤をひっくり返しに席を立たなきゃいけないんだけど、その面倒くささも愛おしく感じれるくらい好き。なんだそれは。でも大好きです。