meet me meet me in your soul


 突如、無性に佐藤亜紀の「バルタザールの遍歴」を読み返したくなったのだが本と漫画とCDとレコードが乱雑の四重奏を織り成す室内の、どのへんに眠っているのか見当もつかない。けれど読みたくて仕方ないので、止むなく片っ端から探し漁る。1時間半くらいかけてようやく発見、した頃には疲れきってかなり読む気が失せていた、のは良いとして途中、折り畳まれた1枚のルース・リーフがどこからか出てきて、なんだろう? と開いてみると筆ペンで絵が描かれていた。


 蛭子能収ガモウひろしを足して2で割った、のを更に10分の1くらいに薄めた拙い画力で描かれたそれは、なんとも残念なことに(としかほんと言いようがない)まぁ明らかに俺のタッチなのである。描いた記憶など一切ないが、ご丁寧にも紙の右下に「1996.6.4」と(これまた明らかに俺の字で)日付まで入っていて、で、どんな絵かというと目をギラギラ鬱血させた少年が画面中央で「校長!!!!」と雄々しく吠えていて、その隣で「あたしンち」の父親みたいなしょぼくれたオヤジがびくっと驚いた顔をしていて、そのオヤジに向けて矢印で「シゲお」とクレジットされている・・・という意味わからなすぎて眩暈しそうな代物である。


 なんですか先生これはあなたのオマエで貴様は誰なんだ、と。見れば見るほど意味がわからない。いったい俺がどんなシチュエーションで、何を意図して、何を表現したくてこれを描いたのか言い当てるのはきわめて難しい。というか、そういう推理なり洞察を絵そのものが全身全霊で拒絶してる。ともあれ1つだけ言えるのは俺は9年前、なんらかの形で確実に気を病んでいたようですね。ということです。もしタイム・マシンが実在するなら、当時の俺 a.k.a (蛭子+ガモウ)÷2×10% に「いいからお前はおとなしく尾崎とか聴いてろ16歳」と言ってやりたい。


 気持ち悪いので灰皿に乗せて燃やしました。

 燃え落ちる絵の、断末魔の火で吸った煙草は微妙に変な味がした。気がする。