World's End Girlfriend / Birthday

amn2005-02-28

from al. 『Ending Story』 00


 「Ending Story」をいつ買ったのか覚えてない。なんか気づいたら持ってた(最近こういうのが多くて嫌に、というか切なくなる・笑)・・・たぶんカレントので、ジャケットが綺麗で、何より World's End Girlfriend っていう名前が素敵で思わず。という、ベタすぎる理由でなんとなく買っていたんだと思う。

 買ってすぐ1回聴いて「よくわからん。まぁ・・・なんか普通?」みたいな印象で放り投げて、それからしばらく全然聴かずに、ある日、またなんとなく目に付いて聴いてみた。そのときは確かメッセとかしてて、とりあえず BGM に何か音さえあってくれれば良い、っていう聴き方。途中まで印象もロクに残ってない。


 やがてメッセの相手が「落ちる」っつって抜けて、1人になって、ちょっと疲れたのでパソコンから離れてソファーに寝転がりながら、目を閉じて、かけっ放しになってた音にぼんやり耳を傾けた。そのとき流れてたのが、これはすごいハッキリ覚えてて「Ending Story」っていう9曲め、タイトル・トラックで、そのとき、唐突に、何かが、来た。

 全身の毛穴をぐっ。と抉じ開け、ぼくの「内側」へ侵食してくるような音の束。音圧。ロマンチックに言えば神秘的、安易な言い方をすれば(?)ドラッグ的な、何か大きなうねり(のようなもの)に飲み込まれる感覚。浮遊感。白いイメージ。幻覚じみた何か。


 ぼくが World's End Girlfriend を初めて「感じ」れた瞬間、そして、続くラスト・トラック「Birthday」・・・このときの、この体験でぼくにとっての World's End Girlfriend は決定的な存在になった、と同時に「Ending Story」というアルバムの、「Ending Story」に至るまでの8曲は殆ど意味を失ってしまった。

 未だにぼくは World's End Girlfriend の、これ以降の音を聴いたことがなくて(World's End Boyfriend、Wonderland Falling Yesterday も含めて)つまり、もうずいぶん長い間、ぼくにとっての World's End Girlfriend は「Ending Story」と「Birthday」というたった2曲で完結・・・というか「第一部・完」みたいな感じで、第二部が始まってないままになっている。


 この文章を書くにあたって久々に(というより、ぼくの感覚的には殆ど「初めて」ってくらいなんだけど)アルバムを1曲めから聴き通して、みたけどやっぱりそれは変らない。8曲めまでを聴いている時間が正直、苦痛にさえ感じれるほどだ。というのは誤解を招きかねない言い方だけど、上に書いたように、あくまでこれはぼくのきわめて個人的な体験から来る話であって一般論じゃない。冒頭8曲のクオリティが、ラスト2曲と比べて圧倒的に劣っているとかそういうんじゃない。と思う。と思う、というのは、つまりぼくにはその判断すらつけれないっていう意味です。あくまで「ぼくにとって」このアルバムは、ラスト2曲の、22分22秒でしかない。それはぼくと World's End Girlfriend がああいう出会い方をした過去を変えれない以上、たぶんずっともう変らない。


 これはレビューではない。あくまでぼくの体験を文字列化しただけの、単なる感想であり、勝手な意味づけでしかない。そして思うのは「Ending Story」の後に続く「Birthday」というフレーズは、いわゆる「誕生」とか「再生」みたく「終った後に、また新しく始まる」的な意味ではきっとない、ということで、つまり「Ending Story」でいったん終り、再び「Birthday」で生まれ変わってまた始まり、最初に戻り、繰り返す・・・といった安易なループ構造を、タイトルの並びで一見、意地悪に匂わせているけれど、しかし実際には拒否している。というのが「ぼくの」解釈で、なぜなら「Birthday」は、その直後に強烈な静寂を求めているふうにぼくは聴こえる。音はそのまま空気に溶けて、なくなって、その消えゆく様を少しでも長く見守ってほしがっているような。

 だから「Birthday」が終って CD が回転を止め、すぐにもう1度、聴き返そうとリプレイ・ボタンに手が伸びたりとか絶対しない。「Ending Story」があり、「Birthday」があり、そしてその後に(ランニング・タイムの毎回異なる、任意の)無音状態があって初めて、1つの音楽。ちょっとカッコつけた言い方をすれば「Ending Story」という作品は、作品が終った後の時間まで支配する作品であって、それはわりかし、ぼくはすごいことだと思う。