ロックンロール

amn2005-04-14



 深夜(というか早朝)5時頃、窓の外はうっすら水色に明るくなってきていて、やべー。今日もバイトだしそろそろ寝ないと。とパソコンの電源を落とすんだけど、あ、でも寝る前にちょっと1〜2曲だけ・・・って DVD のスイッチを入れる。曽我部恵一 with ダブル・オー・テレサ無政府主義的恋愛(asin:B0007QRC76)」の、1曲めが始まって、「サンデイ」


 この時点でもう明日は睡眠不足を覚悟しなきゃならないわけで、それは期末テスト前日に「1巻だけ」って思って「スラム・ダンク」読み始めるのとつまり同じで、たとえ読む前「1巻だけ」のつもりでも、いざ読みだしたらハイおしまい。って、ぱたっと踵を返せるわけがないんであって、だから実際ここ5日間で、実に5本の「眠眠打破」をぼくは服用しました。だって気づいたら DVD は最高無敵のロックンロール・ショウ最高潮で、気づいたらアンコールが始まって終ってて、時計は朝のもう7時半で、ボーナス・トラックのツアー・ドキュメント「無政府主義的行動学」を見終えると8時を過ぎてたりとかする・・・11時からバイトなのに!

 そんなふうに危険きわまりないロックンロール・ムーヴィー「無政府主義的恋愛」は、なんてゆーかもうほんとヤバい。いったん見始めちゃったらこんなん、どこでスイッチ切れっていうんだ。手を伸ばす気になれない。スキップ・ボタンすら触れたくない。あーもー明日も「眠眠打破」ですよ。そろそろお腹とか壊しそうだ。そしたら諦めて正露丸も買う。


 ロックンロールってのはつまりなんなんですか? っていう、今まで何100何1000万人が自問し、誰か答えを教えてくれそうな人に問いかけつづけてきた疑問を、いっちょ前にぼくもまぁずいぶん、それなりの昔からそれなりに考えてきたと思うんだけど、その答えは今まだちょっとわかんなかったり、今ならなんとなくこういう気がしたり、やっぱり今こう思ったり・・・って日々更新されていき(その合間合間に度々迷走したりもしつつ)今へ至るわけですが、初めて「無政府主義的恋愛」を見た5日前にまたぼくん中のロックンロールは更新されて、今現在の最新定義は「全部」っつーことになった。なりました。ロックンロールとは全部である、ということ!

 それってつまりロックンロールは言うまでもなくカッコ良いわけなんですけど、カッコ良いロックンロールは、カッコ良い部分だけをすっ。て濾過して出来上がる透明色のもんではなくて、カッコ良い部分も悪い部分も全部合わせてカッコ良くてロックンロール、だったのです。んで実際「Shimokitazawa Concert」も「STRAWBERRY」もそういう作品なんだけど、「無政府主義的恋愛」ではさらにもう1歩。2歩。10歩ぶんくらい、びっくりするくらいストレートでわかりやすくてびっくりした。不完全で、けれど完璧なロックンロール。たまにタドタドしかったりトチったりとかあるけど、でも完璧で最強でロックでロールで他の何物でもない156分。


 1曲終るごとに曽我部さんのはにかんで言う「イエー!」とか「サンキュー!」のぎこちなさとかちょっとカッコ悪いけど最高カッコ良くて、「今日は新曲いっぱいやるよー」って言った直後に「まずは・・・これはちょっと新しい曲すぎてまだバンドで合わしてません」つって「俺1人でやります」って、しかもアコギじゃなくてエレキ1本で、堂々と弾き語るとかかなりカッコ悪いっぽいし、しかも歌いながら曽我部さん汗だくで、髪の毛が右の瞼んとこに汗でぺったり貼りついて、ぴょろってなんかワカメみたくなっててすげーカッコ悪くて超カッコ良くて、そんなロックンロールがTシャツとジーパン履いてギター弾いてるみたいな曽我部さんの後ろの、ダブル・オー・テレサのちょっと力入りすぎててパーフェクトじゃないギクシャク感とか、けどそれで5人で同時に音出した瞬間とにかくもう完璧で、まだやっぱりどっかヨレヨレしてるけど全然カッコイイじゃんてゆーか、なんかもう1つの塊として。

 んでその塊と、客席との距離感とか温度差っていうか。最初はだいぶ空白の目立ったその「間」が、ライヴの進むにつれて一気にぐわーっと。なふうじゃなくて、3歩進んで2歩退がるっぽい縮まり方で、少しずつぎこちなく、けれどゆっくり確実に埋まっていくらへんとか最高に素敵すぎる。「ここには紛れもないリアルがある」とかそういう言い方ってなんかすげーダサいけど、だってでもカッコ良いもんはカッコ良いから仕方なくて、別にリアルとかどーでも良くて、とにかくここには全部のロックンロールがあって素晴らしくグルーヴしてて恐ろしく感動的であるっていう。最低にダサくて最高にカッコ良いっていう。それだけ。これが別に「いや幻想ですから」っつわれても全然関係ないのだった。もーなんか相当適当なこと言ってるけど、たぶん。



(※補記) 月面アーカイヴス :曽我部恵一

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 どんだけ愛を表明すれば気が済むんですか俺は、という話。