月面リサイクル・2


■ ずるり / ずれてなどいない (id:amn:20041207)

 ずるりの音楽の根底には、常に肥大するエゴへの警告が強く込められているように思う。

 もっともデビュー当時のずるりに、一聴してすぐ伝わるだけの急進性なり社会性が備わっていたわけではない。そもそも彼らは、カート・コバーンより深い絶望を、トム・ヨークよりネガティヴに(といってもその程度のネガティヴさは、90年代以降の自称ロックに腐るほど存在するのだけれど)、山口隆よりトチ狂った風情で、吉野寿よりレンズの厚い眼鏡をかけて歌い上げるバンドだった。


 それだけでも十二分に「エモーショナル」と形容されうる圧倒的な存在感を、彼らは早くも黎明期より身につけていた稀有な存在だったわけだが、その肥沃な土壌をベースに、次なるもう一歩を踏みだした傑作こそが、この第6弾マキシ・シングル「ずれてなどいない」だったと言えるだろう。

 自らのバンド名をそのまま正面切って否定し、過去との決別を高らかに宣言してみせたタイトルからも窺えるように、ここで歌われるのは「過剰な自己愛による自己に対する盲目化」への嫌悪、そして「自分が何者かはわからないけれど、それでも生きていく資格はあるんだ」という強烈なメッセージに他ならない。ぼくらはそこにヴォーカル・ピシ田が、人間として一回り強く、逞しく成長する過程を見て取れるのみならず、追体験することさえ可能だ。


 とはいえ、しかしジャケットを見れば明らかなように、やっぱり彼らはどうしようもなくずれまくっているのであって、したがって以上に述べた内容は全て理想論に過ぎず、実際には途方もなく空回りしてしまっている。カップリングに収録された6曲もの(!) Venom のカヴァーも含め、結局のところアティテュードというか、誰に向けたシングルなのかが全くわからない。現世とは没交渉の1枚。 (土屋)

 # flyflap 『インストアイベントに行ったんですが落雷中止になり悲しい思いをした一人です。整理番号1桁だったのになぁ・・・』


 # amn 『いやゼニゴケさんラッキーですよそれ。考えてみれば、インストアが中止でなく行われた場合、それに参加している2時間弱の間にもしかして家が爆発した可能性もゼロではありませんからね。ええ、その危険を回避できてラッキーでしたよ・・・あっはっはっはっ。』


 # season 『ずるりは「外人面白い」という理由でズリストファー・マグワイアをメンバーに迎え入れ、ひとしきり爆笑するや飽きてしまい、すぐさまクビにしましたよね(カックラキン・オン・ジャパンの二万字インタビューで言ってました)。外人=面白いという価値観は「お笑いウルトラクイズ」の”米軍爆破クイズ”を頂点としていることは歴史的に明らかであり、2004年も終わろうとしているこの時代に、あたかも「自分たちの笑いが最先端である」と言わんばかりの態度には正直辟易としました。ネットにはずるり肯定派…というより、ずるり信者といっても差し支えない人たちが多く存在するため、こうしたずるり否定意見を述べるのには勇気が要りました。しかし、米軍爆破クイズを蔑ろにする彼らの態度(意図的なのか、無知なだけなのかは分かりませんが…)には我慢がならず、こうして思いの丈をぶちまけさせて頂いた次第です。人様のスペースで勝手な振る舞い、失礼致しました。問題がありましたら、削除してください。』


 # amn 『元カックラキン編集部の花駆走一郎という人が独立して創刊した「プニューザー」という雑誌があるんですけど、その先月号に、ズリストファーのずるり在籍期間が「ワールド・ダウンタウン」の放送されていた期間とほぼ一致することから、もしかしてピシ田は「外人=面白い」的な旧世紀の価値観が、けど何気に通用するんじゃないの今も? と香ばしくミスアンダースタンディングかましちゃった説が指摘されていましたね。なかなかこれは的を得ているように思います。まぁ案の定、記事本文でなく読者コーナーに寄せられたハガキでしたが(ちなみに「プニューザー」来月号は「巻頭フルカラー50ページ、プラズマ特集」だそうで、今更にも程がありますが勿論ぼくはフラゲします)。ぼくも信者ってほどずるり全肯定派じゃないですけど、とはいえズリストファー未加入の頃にリリースされた「ザ・ワールド・イズ・ボイン」というおっぱい賛歌アルバムは、さすがテーマがテーマだけあってかなり聴き応えのある力作でしたので未聴でしたら是非オススメしたく思います。』


 # azakeri 『amnさんもザ・ワールド・イズ・ボイン肯定派でしたか!切なく、甘酸っぱい雰囲気と先鋭的なサウンドは私も大好きでした。うれしい文章を目にして、興奮しながらいきなり書き込ませていただきます。ズリストファーも悪くはなかったのですが、やはり、ずれていましたね。致命的に。メガネは…もうええやん(紳助口調)』


 # amn 『わあ、あざけりさんも「ボイン」派ですか。ぼくはなんといっても先行シングル・カットされた「ワールズ・エンド・スーパーもじゃ」が好きですね。あの唯一無比のボーボー具合は、ずるりにしか出せない確固たるオリジナリティだと思います。同アルバムは「9曲めが卑猥すぎる」という理由で残念ながら廃盤となってしまったそうですが、1日も早く再発されるのを願って止みません。かくも素晴らしいおっぱい名盤をつくったずるりだけに、「見れば見るほどハイ・ハットがおっぱいに思えてくる。もう俺には叩けないよママ・・・」とノイローゼにまで陥ったらしいズリストファーは、やはり致命的にずれていたとしか言えませんよね。』


 # Bonnie16g 『僕は1stアルバムの「さよならストレッチパンツ」が大好きです。何かの雑誌で「ストレッチパンツはピチッとしとってずれへんからロックやないと思いまんねん。お洒落やけど・・・お洒落やけどね!!」という発言をしてて、それを見た僕は感動のあまり丁度その時手にしていたストレッチパンツをビリビリに破いてしまいました。その行為は僕だけじゃなく多くの人が実行していて、そのせいで急遽初回以降のプレス分にはストレッチパンツが封入されスマッシュヒットを飛ばしたのは有名な話ですよね。僕はそれ以来毎月1枚「さよならストレッチパンツ」を購入しては聴きながら破いてます。ちなみにアルバムタイトルでもある4曲目の「さよならストレッチパンツ」で破く人が多いらしいですが、僕は7曲目の「淫乱ソファー」で破きます♪』


 # amn 『あーやっぱ「ストパン」は人気高いよね。かくいう俺も20回ほど破ったけど、うち18回は血が出たもんね。あんときはさすがに俺も「こ・・・これはとんでもないアルバムだ!」と思わず仰け反ってしまったものですよ。ずるりのデビュー・シングルにして、はてなダイアラーの悲哀を切々と歌い上げた名曲「問う今日」については「月面」でもすでに取り上げましたが、そこからセカンド・シングル「しみ」、そしてアルバム「ストパン」・・・とシモ方向へ急激にシフト・チェンジしていくずるりに正直、当時のぼくは違和感を禁じえませんでした。特にアルバムは、1曲め「パンツ」から12曲め「ブルーマ」まで、ほぼ全編を占める怒涛のパンツ・ソング攻勢にうんざりするほどでした・・・って結局ずるりネタは単なるシモネタだけかい! てゆーか俺が言いだしただけかい! シャーラララララ! シャーラララララ!』


 ずるり楽しかったなー。なんつーかもう、やりたい放題ですからね。何も考えなくて良い、っていう。「月面」では時々 CD やライヴの感想を書くんですけど、えてして過剰に長文化しがちで(それは偏えにぼくの表現力の問題ですが)1つ書くのに物凄い消耗するんですよ。もっとコンパクトに、さらっと書き流せれたらなーっていつも思うんだけどなかなか・・・というか全然できなくて。触れたい CD やライヴは幾らでもあるのに、だからそうそう頻繁に書けない。その鬱屈が、こういう捻じ曲がった形で反動として出た、という。

 なぜそれが架空の CD レビューなんだっつー話ですけど、まぁ単に憂さ晴らしだから確固たる意図など何もなく、要は遊びたかっただけ。と言えばそれ以上でも以下でもないですが、強いて1つだけプラスすると、以前から「レビューとは何ぞや?」的なことを漠然とながらごちゃごちゃ考えたりしていて、それがちょうどこの少し前くらい頃に一段落してたんですよね。自分の中で、あくまで一応だけど、それなりの答えが1回出て。このへんは次回もうちょい詳細に書くので今は省きますが、とにかくその直後の、ある程度何か吹っ切れてたときだったからこそ、こういうのやろうって思えたのかもなー。という気がする(のと同じくらい、単なる後付けでしかない気もする)


 で、そんなわけでこれ。ずるりとか「ずれてなどいない」っていう設定は全部、うすた京介ピューと吹く!ジャガー」からの借り物。プラス最後の Venom 云々のくだりは、沙村広明竹易てあし)「おひっこし」の1コマより。ジャガーは当然みんな知ってるよね、という想定(という名の傲慢な押し付け)の下に書いたわけですけど、隠し味のつもりで入れた「おひっこし」の認知率が予想を遥かに上回って高く、びっくりすると同時になんだかそれが無性に嬉しかったのが思い出深い。スタンド使いじゃないけど、やっぱり引力みたいのってあるんだなー、と。

 ありがたいことに反響のやたらデカかったずるりですが、その殊勲は俺じゃなく完全に竹田さん(season/現 http://www.ultrasync.net/naph/)なわけです。あそこでズリストファーなるデストロイヤーが唐突に出現しなければ、たぶん自己完結で終ってたろうし。予期せぬ展開にローリング・ストーンしていったコメント欄の応酬大会が何より楽しかった。ちなみに最後の「シャーラララララ!」の元ネタ(?)は → http://www.bounce.com/article/article.php/1682


 というわけで全体の約99%がパクリによって構成される悪質イリーガル似非ダイアリー「月面」ですが、いつ訴えられてもおかしくない不安を胸中に忍ばせつつ「リサイクル・第3回」へつづく。悪ノリしてくれた共犯者のゼニゴケさん(id:flyflap)あざけり先生(id:azakeri)ぼにいくん(Bonnie16g/現 id:???)サンクス! 謹んで傍聴券を進呈させていただきます。