Give Up The Postal ServiceGive Up (2003)


 2月にやたらヘヴィ・ローテーションしてたアルバム。初めて聴いた頃は、まーわかりやすいエレ・ポップというか。聴きやすいしうまくまとまってると思うけど、それだけっつーか、いまいちパンチが足りないし小手先っぽくて物足りないかな・・・ていう薄味な印象しかなかったんですけど、気紛れで聴き直してみたらドえらいハマった。

 何度も表明してる(はず・・・たぶん)ように、ぼくはウェイン・コイン(The Flaming Lips)とジョナサン・ドナヒュー(Mercury Rev)の声がむちゃくちゃ好きです。そして The Postal Service に於けるベンジャミン・ギバード(Death Cab For Cutie)のヴォーカルも、わりと彼らに近い魅力をもってる。超似てるってほどじゃないし、率直に言えば、ウェインやジョナサンほど、あのゾクッとする幽玄めいた魔法もかかってないんだけど、例えばハイ・トーンの伸ばし方とかで時折、魔法の片鱗が垣間見れる。そこがやっぱりハマった理由で。


 で、それってイコール単に声の好き/嫌いの問題というより(声質そのものも近いには近いと思うけど)サウンドとの相性が大きいのかな、と思う。ほっこり系ピコピコ風味のエレクトロ音に、ベンのヴォーカルがうまく乗ってる。サウンドとヴォーカルが足し算じゃなく掛け算できてるっていうか、最初に物足りなく思ったのの1つに、ビートがやや控えめすぎるかも。もうちょい気持ち強めで良いのに・・・みたく感じてたけど、ヴォーカルを少しでも余計に削がず最大限活かすにはベストなバランスかもしれない。かといって完全に後衛で BGM に徹するでもなく、サウンドサウンドではっきり自己主張してるし、声とのマッチングでより瑞々しく聴こえてくるところもある。

 そういえば俺は Death Cab For Cutie って、ほんの齧った程度であんましちゃんと聴いてないけど(つまり The Postal Service と同じふうに聴き返したらガラッと印象違っちゃうかもしれないけど、何回か聴いた限りの記憶では)とりたててヴォーカルに格別の印象もなく、いわゆるギター・ロックとしか感じれてないんだよね。そういう意味で、まぁこれはあくまでベンのヴォーカルだけにフォーカスすれば、の話だけど Death Cab より Postal のがうまく化学反応してるのかも・・・そのへんはいずれもっかい Death Cab も聴いてみて、じゃないとはっきり言えないけれど(言えたところで、それもあくまで「俺は」 Postal のが好き、ていうだけの結論だし)


 そうそうそんでジョナサンと言えばね、見たんすよ生で! 生マーキュリー・レヴ! いつ? って訊かれたらえーと去年の Fuji Rock ですけれども、そういや2年前って俺、季節を問わずオール・タイムで暇さえあれば Fuji Rock の話ばっかしてた気がするけど去年は「言ってきます」の一言きりで、ライブ・レポどころか「楽しかった」とかそういう感想すら一切書いてなくてほんと人間、1回怠けだすと早いよね、落ちるの。いやほんとあっという間ですよ。

 そんで長年の片思いがやっと実を結んでとうとう見れたジョナサン・ドナヒューは、思ってたとおり変テコな人で最高でした! なんかもう歌以前にボディ・アクションがサイケデリックですよ。砕いて言えば挙動不審です。砕きすぎましたすいません。けどほんとすげー感動した。こんな書き方じゃ実際に見た人じゃないと俺の感動の欠片も伝わるはずないんですけど、見た人――あのときレッド・マーキーにいた人は全員、彼の内宇宙に取り込まれてたんじゃないかとさえ思うね。すごい。あの人は、全身から愛を撒き散らしてた。


 ・・・とか言ってる矢先に、今年は Summer Sonic にフレイミング・リップスですって! おいどうしようこれ。見たすぎる。そんなフェス三昧できるほど経済力ないのに。というわけで今日の話を総括すると「資本主義の残酷さについて」でした。残酷な世界にも神はいるんでしょうか。いるなら、ぼくは幕張をウッドストックに! と祈ります。