どうしようもない僕にウェインが降りてきた


 つーか無理矢理引きずり降ろしに渋谷でハント大会してきた。なんかね、すごい楽しかった。たった CD 1枚買いに日吉と渋谷を東横線で往復する間の、時間と距離がこうも無性に楽しかったのは久しぶり。行きの切符を買ってるときから、もう動悸が高鳴りまくって大変ですよ。日吉 WackWack Non-stopped 状態ですよ。ナンバーガールのライヴ盤ぽくしようとしたら全然なってないっつーかむしろ殺意的な超低温域を「ご愛嬌ですよ」で受け流せるくらいテンションと体温高いですうぜー。

 と、ひどい枕を振りつつ、とうとう The Flaming Lips の新作「At War With The Mystics」が出ましたよ。さんざん待たされて待たされて、けど待ちくたびれれるはずもなく延々「The W.A.N.D.」を試聴し倒して待ち抜いた日々ありがとう。渋谷 Reco-fan で現物とファースト・コンタクトした瞬間、張り裂けるかと思いました胸が。巨乳が。


 アルバムに対する過度の期待も勿論ですけど、なんだろう「発売日当日に一刻も早くレコ屋へ駆けつけて手に取りたくて、思わずちょっと早足んなっちゃう前のめり感」ていうか、そういうイベント性そのものが新鮮で面白い。しばらくなかったもんな、こういうの、一昔前は月1くらいんペースであったはずなんだけど、わりと最近「何もそんな焦る意味ねーじゃん。新譜だけが音楽じゃないし。良い音楽は他にもいっぱいあるんだし、とりあえず積ん聴のほう回って待って、頃合を見て買うんで十分じゃん」みたく変に達観じみちゃってて、それは確かに理に適ってるし、自分の今のモードの等身大のメンタリティなので否定するつもりもないけど、でもやっぱりこういう、アタマと別の部分で生まれる、抑えきれない、青い感情って時々やたら恋しかったり、そんで単純に気持ち良いから思い出せると嬉しく思う。

 あとたった30分が待ちきれなくて帰りの電車ん中で、再生機器もないのにビニール破って、まじまじレーベル見つめちゃったり、スリーブ開いて国内盤ならライナー・ノーツとかあるからまだしも、そんなの輸入盤で入ってないから英詩を、じっくり読み込むでもなく字面だけ目で追っかけてみたり、そういう、ほんと「何もそんな焦る意味ねーじゃん」としか言えない性急さと、ぐんぐん膨れ上がってく期待感の、縒り合わさった「んんんんーっ!」っていう衝動。ようやく家に帰って、靴下を脱ぐよりコンタクト外すよりソファーに腰掛けて一息つくよりコーヒー・メイカーのスイッチ入れるより何より真っ先プレイヤーんとこ直行して、銀盤ブチ込んで、そして流れてくる待ちに待ちまくった音の一発め!


 を受け止めた瞬間たるや、その感動はもう格別で。わりと冗談抜きで、本気で「生きてて良かったー!」くらい思ってると思うんですよね。音に全部フッ飛ばされて、そんなの意識さえできない中で。そのくらい超高密度な瞬間を知る。


 その感激のデカすぎるあまり、最後まで一通り聴き終ったとき全然ほとんど何も覚えてなかったくらい。感想は書きません。まだまだ何回、何10回も聴くまで、言葉に落とせる気が全然しない。唯一はっきり言えるのは、その待ちに待ちまくった「一発め」が紛れもなく、ぼくの愛して止まない The Flaming Lips そのものでした! Love! っていうこと。

At War With the Mystics The Flaming LipsAt War With the Mystics (2006)