Landreaall 8 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) おがきちかLandreaall 8 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)


 そんで8巻ですけど、ざっくり言うと「舞踏会が始まって終って酒飲んで猫耳」ということで、けっこうとっ散らかった感じになるかなぁ。と思ったら(Tailpiece の本編とのリンクも含めて)バッチリです、全然バランス良くまとまってて。6〜7巻と「聖名」絡みのわりと大掛かりな話が続いた後なんで、余計にこういう賑やかな日常が懐かしくもあり。要は、とっ散らかってんのはお前の説明がざっくりすぎるだけだろ、ということですけど。

 わりと1冊丸々 Tailpieces っぽいというか、「竜を倒す」とか「聖名」みたいな太い一本道のない、サイド・ストーリー集的な巻では今のところあるんですけど、ぼくが単純にアカデミーのわいわい楽しい雰囲気が大好きなのも込みで、9巻以降どうなるかまだわかんないけど、そろそろまたちょっと大きめに話が動きそうとして、そうなるとこの位置に8巻があるのはいっそう意味を持ってくるんじゃないかなぁ、と。


 それは単に箸休めとかクッション的な意味もあるし、それ以上に彼らの日常がひと続きに繋がっている、という意味で。そのへんおがきさんはかなり意識的なはずで、4巻の折り返しに「物語には過去と未来がくっついていて、本当は、始まりや終わりはないのです」って書いてあるそのまんまですけど、だからさっき「サイド・ストーリー集的な」という言葉を便宜的に使ったけど、ほんとはどっちがメインとかサイドじゃなく、全部ひとつながりで彼らの物語で。彼ら、というのも単に DX (とかイオンや六甲)だけじゃなく、みんながみんなひとりひとり生きてて、あくまで DX を中心にそこから切り取ってる、という。

 勿論それは「Landreaall」に限った話じゃなく、どんな漫画であれ小説であれなんであれそういう見方で考えれば全部そう言えるんだけど、ぼくが特に魅かれるのは「そういう見方で考え」るまでもなく自然にそう受け入れれるのが「Landreaall」なので。だから「聖名の件も一段落したし、次行く前にちょっと一息入れましょう」みたくさらっと流すんじゃなく、言い方は悪いですけど(あくまで、例えば「竜を倒しに行く」とかに比べて)大したことのない舞踏会の話を、それまでと変らない密度できっちり描き込んだうえで、やっぱり何事もなく(リドにはあったけど)終る・・・というのは大きいんじゃないかと。


 んで、その「つながってる」のも単に前の話と次の話が、っていうだけじゃなくて、ぼくは普段からけっこう何回も「Landreaall」読み返してるし、新刊が出たとなれば当然ここ3日間でまた5回くらいアタマから読むわけですけど、そうするとまたちょっとずつ過去と未来がつながる(ぼくの中で。彼らの中では当然、最初から全部つながってるので)んですよ。何巻か前にぽろっと出てきた一言がやっと今んなってつながったり、未だにつながってないままのもいっぱいあって、その中には最後までつながらないまま終るのもあるだろうし、幾つかは Tailpiece で補完されたり(3段落前で、サイド・ストーリー集的な巻では「今のところ」ある、と保留を打ったのもそういうことで、まだぼくの気づいてないどこかが今後すごい重要なキーとしてつながっても全然おかしくないので。という意味を含みます)・・・だからこそ飽きもせず何回も読み返しちゃうし、読み返すほどもっと続きが読みたくなるし、どうせ本屋には明日行くのにたった1日が待ちきれなかったりですね。

 ついでに、そのつながりを「そういう見方で考えるまでもなく自然にそう受け入れれる」のを同じくらい感じる漫画として「よつばと!」があって、4巻の表紙にバトミントンのラケットとか虎子の車の上で燃え盛った花火の抜け殻が置いてあったり、ジャンボは「フラワージャンボ」が定休の木曜日の話にしかちゃんと(ちゃんと?)登場しない、とか、そういうのに通じる話だと思うんですけど。それって要は作者の設定がすごい細かいところまで行き届いてる、とざっくり言っちゃえばそれまでの色気ない話でもあるんですが、でも「いやそうだけど・・・でもなんかそういうのを超えたところで彼らは彼らの毎日を生きてるんだよ」って幸せに錯覚してしまえれるのがファンタジーとして素晴らしいな、と。