じゃあちょっと辻川幸一郎さんについて、ざっと復習しときましょうか。


 まずウォーム・アップがてら、このへんからいっときましょう。

◆ Eyes

 Getty Images で発表された、見たまんま「Eyes」という作品です。音楽は Cornelius ・・・この2人はもうゴールデン・タッグと呼んじゃって良いでしょう。どちらかについて語るうえで、互いの名前を出さずには語りきれない、というくらい今や蜜月の間柄ですね。というか今から並べてくのも、半分「Cornelius 特集」みたいな感じですけど。

 てことで、さっそく「Sensuous」の一連の MV を。

Cornelius/Music

Cornelius/Breezin'

 このシングル2曲については、辻川さん本人による解説も併せてどうぞ。

http://www.spaceshowertv.com/vmc/program/interviews/cone.html

 このインタビューは「Music」「Breezin'」の解説のみならず、「Sensuous」を聴くうえで、また「Sensuous」に於ける音と映像のつながり方を考えるうえでも、すごく刺激的だと思うんで必読な。いいから全部読め。で、読んでからまた「Music」「Breezin'」を見るといっそう面白いはず。

 中央をゼロ地点にして左右がシンメトリーになっているのにも関わらず、左から右に小さく鳥を飛ばす、といった変態的なこともしています。

 さらりと「変態」を自認しながら辻川マジックは炸裂しまくり! つづいて先日も紹介したばかりですが「Sensuous」からもう2つ。

CorneliusBeep It

Cornelius/Fit Song

 ここでちょっと Cornelius から離れますが、先日「Fit Song」を初めて見たとき、どうも随所でちらほら見たことあるような気が・・・と思ってたら、これだ! デ・ジャ・ヴの謎が解けた。

Supercar/Wonder Word

 うん、文句なしに変態ですね。最高です。辻川さんの MV は、これは Cornelius の音についても言えると思うけど、常に「かっこいい」だけじゃなく「面白さ」、遊び心を忘れません。その溢れすぎなユーモアが、曲の陽気さに煽られ突っ走って大爆発すると

Rip Slyme/Galaxy

 ・・・こうなります。2回めの「愛と Beats!」んときの PES さんスマイルが眩すぎて何回見ても死ぬ。Rip Slyme の5人が指人形になっちゃった経緯は こちらのインタビューで確認しま しょう。

 でもって指つながりで Cornelius の前作「Point」より、こちら。

Cornelius/Tone Twilight Zone

 これはぼくが2002年の Fuji RockCornelius のステージを見たとき、いちばんざっくり瞼に焼きついた映像ですね。ものすごい強烈でした。1つめのインタビューで「音楽と映像を響き合わせる」、すぐ上の2つめで「音の構造にムービーをはめ込んでいく」という言い方でともに語られてますが、まさにそう。

 曲の大まかな進行や展開、あるいは歌詞とか、曲全体の世界観に合わせてつくられた PV は数あれど(というか、それ全部無視したらそもそも PV じゃないですけど)ここまで厳密かつ執拗に、音の1つ1つまで徹底して映像化してるのが辻川さんの――特に「Point」〜「Sensuous」らへんの MV の肝でしょうし。そして勿論それは、そうできるだけの土壌が「Point」や「Sensuous」にもともとあってこそで、だから辻川さんにとっても Cornelius の一連の MV は、ほんとにつくり甲斐のある作品なのでしょう。

 さて「Point」と言えば、やはり最初に思いつくのが先行シングルでもあった「Drop」ですが、この曲にはオリジナルの MV と、それをさらに抽象した別バージョン(この別バージョン「Drop−Do It Again」で2002年、Resfest の MV 部門オーディエンス・アワードを受賞)があります。

CorneliusDrop

CorneliusDrop−Do It Again

 「Drop−Do It Again」については、辻川さんと小山田さんのインタビュー映像を「AUDIOVISUALJAPAN」という DVD (asin:B00028G23E)で見ることができます。ダイジェスト版の冒頭で、ほんのちらっとだけですが 実写で騙し絵みたいな、そういうのをやろうかな」と喋る辻川さんが見 れますよ。

 ついでにインタビューをもう1コ、去年2月に Apple Store 銀座で行われたトークライブのレポートをどうぞ。

http://www.ascii.co.jp/pb/macpower/ginza/archives/2/index.html

 文中で触れられている 日産 Cube のスクリーンセーバー「Sugar Cube Clock」は、こちら でダウンロードできます。ぼくもこれ使ってるんですが、アリ(を Cube に変更可能)が角砂糖をちょこまか動かして時刻表示に並べ替えていく、というもので、すごい面白い。ついつい画面を戻すの忘れて見入っちゃいます。何かお気に入りのスクリーンセーバーを探してる人には是非おすすめ。ちなみにこれ、つくるのものすごい大変だったそうで そんな制作秘話もちらっ と。

 さて、真ん中の指コーナー(指コーナーってお前)らへんで紹介したインタビューで、辻川さんが「MV を作るという意識をきちんと持って臨んだデビュー作」と語っている嶺川さんの「Plash」がこちら。

嶺川貴子/Plash

 さすがにデビュー作だし、今と比べれば若干おとなしめ・・・かと思いきや、しっかり中盤で変態ワールド突入します。一発めにして辻川マジック炸裂。お見事。ちなみにこれは勝手で余計な想像ですが、「Plash」って99年の曲で(asin:B00005FOBP)、ゴールデン・タッグ結成の「Point」が01年だから、てことは辻川―小山田ライン連結のきっかけとなったのが、この MV かもしれないですね。


 そんな「Plash」の脳内変態ゾーンを、丸1曲ずっと展開させてみるとこうなります。Spanova の MV は他にも手がけてるようですが、youtube で見つかったのはこれ1つだけ。

Spanova/Harumaki

 ・・・というわけで以上、youtube の恩恵に浴しまくりながら辻川幸一郎作品を紹介してみました。辻川さん自身のお気に入りという Sketch Show 「MARS」や、ぼくが個人的に大好きな UA 「閃光」、あと見たことないけど気になる Kahimi Karie 「Trapeziste」など、紹介しきれなかった(というか削除されてた)ぶんもまだまだありますが、そのへんは皆さん自力でどうにかしてください。作品リストこのへん→ http://www.spaceshowertv.com/vmc/program/vmc_selection/g_directors6.html#onair


 ぼくは映像についてまったく詳しくないので、まともな解説もできず今回もただ紹介のみだし、正直それほど普段から高い関心もないんですが、そんなぼくをも虜にしてしまう辻川マジック恐るべし、といった感じですね。もっとじっくり、ちゃんとした画質で見たいので、もしこれをきっかけに辻川さんへの興味がふつふつ沸いてきた・・・という人がいたら、ぜひ「辻川幸一郎 映像作品集」の DVD 発売をともに祈りましょう。