あむ的レビューテキスト系レビューエントリー

amn2004-04-04



 プレイガイド・ジャングルっていうフリー・ペーパーの、今月号に「今日からの電気グルーヴ」と題した「Singles & Strikes」レビューが載ってるんだけど、これがとても素晴らしいので入手可能な方は是非読んでみてほしいです(首都圏の主要musicスポット800箇所で配布・・・だそうですよ)。

 ワムラハルヨさんという方のテキストなんですが、この人、ド頭でいきなり「ぶっちゃけるとそんなに電気グルーヴって聴いてこなかった」と大っぴらにぶちまけます。「ええーっ? ででで電気だよ? 電気でつくるグルーヴだよ? 聴いてないの? しかもよりによってベスト盤のレビューを、そんな電気知らずの方に任せちゃっていいわけですか?」と一瞬、編集方針を疑いたくもなるのですが、いざ読んでみると実に新鮮で胸を打つ文章でした。


 何が良いって、無駄なカッコツケが一切・・・とまでいかなくとも殆ど入ってない。電気グルーヴという超ビッグ・ネームを「タイミングであったり、金の持ち合わせだったり、あとは電気グルーヴというマーケットに微妙な線で入っていなかったと思う」と、うわぁーこのコ素直ー! と驚かずにいれない素直さで「なんだか聴かずじまいだった」とバッサリ切る。

 「Singles」音源はそれでも一通り聴き覚え程度はあったらしいが、曲別レビューでは「ポポ」について「メロディを聴いた瞬間、タイトルは思い浮かばなかったが『電車のうたぁ!』って記憶が甦った」「『Mud Ebis』や『スネークフィンガー』という初期の曲はタイトルさえ知らない」・・・と、これまた素直!

 「Strikes」に至っては「全曲、初めて聴くものでした。いや、参ったね」・・・もはやこれは読者全員に「いや参るのはこっちだよ!」と突っ込ませようって策略か? とさえ勘繰ってしまうくらいの素直さで、恥も外聞もなく言ってのけるその大胆さが素敵です。だってワムラハルヨさんがとりあえず全部知ってはいた「Singles」サイドは1曲ずつ丁寧にコメントしてるのに、「Strikes」のほうは曲名すら記載してない(!)んだよ。この開き直りっぷりは半端じゃないよ!


 けど、その素直さが何より素晴らしい。あくまで「私は電気をあんま知りません」という立ち位置を崩さず、「そんな私がこのベスト盤を聴いてこう思いました!」って意見の打ちだし方が、実にストレートで芯が通ってる。

 だからこそ「これが電気グルーヴでなければ『Singles』だけでも良かったのだろう。けれど『Strikes』があることが電気グルーヴとしての電気グルーヴの濃さなのだと、急に知った風な口で思ったりする」・・・という言い方に嫌味が全然ないし、嘘や誇張のないのもはっきりわかる。「ああ。この人は、このCDを聴いて確かにこう思ったんだな。感じたんだな」っていうのが、見事なほどガシッと伝わってくる。つまり文章全体に圧倒的な説得力がある。

 愚直であり、ゆえに力強い。あんまり雑誌とかチェックしてないんで数はそう多くないけど、少なくともぼくの見た幾つかの「Singles & Strikes」評のうち、これほど「うわぁーなんか買わなくて別に良いやって思ってたけどやっぱ買いてぇー!」って思わせてくれたのは他にない。ぼくより電気を全然知らない人の書いた、しかもB面の収録曲すら教えてくれない不親切きわまりないレビューが、にも拘らずこれほど胸を打つんだからすごいと思う。手垢に塗れた言い方だけど、ここにはワムラハルヨという人の「生の声」が確かに込められていると思う。


 ブログってそもそも、例えばそれこそ今日のエントリー・タイトルの元ネタである「いしい的レビューサイト系ニュースサイト(id:assam_tea)」みたく、いろんなところに散ってる膨大量のソースん中から欲しい情報だけ選り抜いてくれて便利。って部分で、これほど爆発的に普及したわけでしょ?

 そういう意味じゃ「プラネタ alternative」なんて全然ブログの体裁を為してない(はてなダイアリーじたいがブログかブログじゃないのか。エイプリル・フールのあれとかなんなの? とか。そこらへんぼくさっぱり知りませんけど)。情報収集力なんてぼく皆無に近いですしね。ましてや速報性なんてゼロどころかマイナスですよ(今年に入って買った新譜が、なんたって「zazen boys」1枚っきりだもの! あとDCPRGsugiurumnの12インチだけ)。

 で。それでも少数名ながらここをアンテナに入れてくれたり、ちょくちょく読んでくれる人がいるのはとてもありがたいことですけれど、その人たちが何かしら意味みたいのを見出してくれ、またぼくがそれに対して還元できることといえば、もう「自分なりの思いや意見をストレートに吐きだす」くらいしかねぇよなぁ。と思ったわけです。


 「負うた子に教えられ」じゃないですが、無知で不親切な(失礼!)ワムラハルヨさんの電気グルーヴ評を読んでぼくはこのように啓発されましたよ。という話。なんだろうこれは・・・閉鎖するでも新規オープンでもなく、なんとも中途半端な時期の、妙な所信表明みたくなっちゃいましたが(笑)・・・まぁ今後も今までどおり地味に続きます。