スピッツ / ハチミツ (95)

thanks to 坂井(id:hotcake


 で、いきなり私事で恐縮ですが、昨日のコメント欄にも書いたようにスピッツでぼくのフェイヴァリットは 5th 「空の飛び方」と 8th 「フェイクファー」です。(以下、あくまで「俺的スピッツ史」なのをお断りしたうえで)スピッツは94年、「空の飛び方」というとんでもない傑作をつくりあげました。ぼくは未だにこのアルバムがスピッツサウンドの1つの完成形と思っていて、過去4枚を踏まえたうえでの集大成。当時のスピッツに可能な限りのアプローチなりチャレンジを、いったんここで吐きだしきった印象があります。

 で、次なる「フェイクファー」という頂へ向け気分一新。リスタートというか、この「ハチミツ」はそういう配置にあると思う(リスタート直後に突如「ロビンソン」でブレイクしたのは、ぼくが思うに単なる偶然です。タイミングの問題。現にこれ以前の楽曲「空も飛べるはず」「君が思い出になる前に」「夢じゃない」が以降、続々とスポットを浴びたりシングル・カットされるなど、ブレイクする要素(という言い方もあんまし好きじゃないけれど)はそもそも「ロビンソン」で一朝一夕に形成されたわけではない)。


 よしもとよしともさんの言葉を借りれば、いわゆる「膿出し」的なアルバム・・・とか言ってしまうとこのアルバムを好きな人の気分を害してしまうかもしれないけれど、そういう意図は全然なくて、特に「ハチミツ」で初めてスピッツに触れた人数。というのは数字的に見て相当多い(というか過半数)のは明らかだし、その意味で「スピッツ入門編」的アイテムとしては十分すぎるほど良く出来ているアルバムとも思う。

 スピッツのディスコブラフィーに「実験的」という言葉を用いるとすれば、おそらく最も想起されやすいのが 4th「クリスピー!」じゃないかな。と思うんですけど、個人的には上記を踏まえて、やはりそれ以上に実験的と思えるのが「ハチミツ」で、例えばいかにもスピッツらしい変拍子が、意外にもスピッツらしく仕上がってみた(なんだこの日本語は・笑。つまり「ありそうでなかった」的な意味です)タイトル・トラック「ハチミツ」。サビっぽくないサビが印象的な「歩き出せ、クローバー」。後の「楓」へと至るエポック・メイク「愛のことば」。あと、一聴して明らかに異端(笑)な「あじさい通り」とか・・・どれも実験的でありつつ、かつポップ・ソングとしてもなんら破綻なく成立している佳曲揃い。まぁベタにまとめるとそういうイメージ。


 あとこれまた超私事ですけど、このアルバムの出た95年当時ってまだMDとか普及してなくて、落とすといえばカセット・テープ。んで、ぼくは「どうせならそのまま落とすんじゃなくて、自分好みに曲順を入れ替えよう。オリジナルの曲順で楽しみたければ普通にCD聴けば良いしね」って考えたがる人なので、「ハチミツ」もそうしてテープに落としたんですね。

 そしたら数年後にスピッツ音源がまとめてアナログ化されたんだけど、そのアナログ盤の曲順と、自分のつくったテープのとがほぼ完全に一致しててすごい驚いた記憶が未だ鮮明にあります。参考までに挙げておくと、アナログ盤は


 side A
  トンガリ '95 / 歩き出せ、クローバー / ロビンソン / ルナルナ / あじさい通り

 side B
  Y / 愛のことば / ハチミツ / 涙がキラリ / グラスホッパー / 君と暮らせたら


 ・・・です。あの、手前味噌にも若干なってしまうけれど、もし「ハチミツ」をお持ちの方は、是非一度この曲順で聴いてみてほしいと思います(わざわざ編集しないでも、プログラム再生するとかして)。特に「クローバー」「ロビンソン」「ルナルナ」「あじさい」って続いて、レコード(とかテープ)を裏にひっくり返す間を挟んで、B面が「Y」でスタート。っていう流れがとても素晴らしいですよ。


 あとアナログ盤「ハチミツ」のもう1つ素晴らしいのは、やまだないと画伯によるスピッツ・コミックがオマケで付いてるんだけど、それは別にスピッツのメンバーを主人公にしたストーリーとかじゃなく、ジャケットの赤いワンピースの少女をモチーフにした1枚っきりの超短編で、あぁもうほんとこれがね。可愛すぎて悶絶しそうになります。

 今回、坂井さんにお勧めされて久々にレコード・ラックから引ッ張りだしてみてですね。これを見ただけで聴く前からむちゃくちゃ和みました。素敵すぎ。