インタールード 「池谷という男」


 大好きだった高井先生と、無情にも別れはやってきた。

 それは来たる新時代「パクス・今野ーナ」の幕開けに浮かれていたぼくにとって、晴天の霹靂以外の何物でもなかった。優しくて綺麗で素敵な高井先生はもういない。彼女はどこか他の小学校で、あの優しくて綺麗で素敵な笑顔を、他の生徒たちに向けるのだ。彼女の弾くピアノに合わせて「グリーン・グリーン」を歌える日はもう二度と来ない。とても悲しい。


 そして4月の、さすがに何日だったか覚えてないけど、ぼくらが高井先生以外に初めて音楽を習うその日。ぼくの傷心など露知らず「新しい先生どんな人かなー」とクラスメイトのそわそわ囁く音楽室に、池谷先生は現れた。


 「うわっ。この人やる気ねぇー!!!」


 彼は音楽の専任なのに、なぜか知らないがジャージだった。